03.錬金術師の苦悩
(10/10)
その日の夜、シャオリーは夢を見た。
「こんにちはー!今日もよろしくお願いしまーす!」
エド、アル、シャオリーの三人は、今日もまたタッカー家を訪れていた。
馬車の中では雨が降り出しそうな雲行きだったが、タッカー家に着いた頃にはすっかり晴れ上がっていた。
しばらくすると、廊下を走る音が聞こえてきて、玄関の扉が少し開いた。
そこからひょっこりと顔を覗かせたのはニーナだ。
いつもはすぐにシャオリーに飛びついてくるニーナだったが、今日は玄関に身体半分を隠したままモジモジしている。
エドとアルは怪訝な顔をしてシャオリーを振り返った。
シャオリーはその理由にすぐにピンと来て、ニーナを促した。
「ニーナ、おいで!」
ニーナはようやくソロソロと出てきて、両手を後ろに隠したまま、シャオリーの後ろに隠れるように立つ。
そんなニーナをシャオリーは笑ってエドとアルの前に押し出した。
「ほらほら、ニーナ」
あのね、えっとね。
ニーナは照れながら後ろに隠していた花冠を二人に差し出す。
「これ、あげる!いつも遊んでくれてありがとう!」
ニーナの突然のプレゼントに、二人は嬉しそうに礼を言って頭を撫でた。
ニーナはそのままシャオリーの元に戻ってくる。
手にはまだ一つ、花冠が握られていた。
「はい、これはお姉ちゃんの!いつもありがとう!」
にっこり笑うニーナをシャオリーは力いっぱい抱きしめた。
「んー!ありがとうニーナ!」
キャーと歓声を上げるニーナに、シャオリーは笑顔で尋ねる。
「今日は何して遊ぼっか?」
それを聞いたエドとアルが近寄ってきた。
「今日はオレたちも…」
「最初から、いいかな?」
ニーナは顔を輝かせ、わーいと飛び跳ねて、庭にいるアレキサンダーの元へ走ってゆく。
大きく手を振って三人に向かって叫んだ。
「遊ぼう!」
それを合図にシャオリーは走り出す。
エドとアルも、つられるように走り出した。
「遊ぼう!遊ぼうよ!」
――悲しい夢だった。
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