03.錬金術師の苦悩
(9/10)
その時ふと、シャオリーは自分が右手を握りしめていることに気づいた。
しかも、思いきり力を込めてしまわないように、無意識に加減をしている。
手に握られていたのは、花冠だった。
――ニーナ、何かお礼したいなぁ。
――ニーナ、一人で作る!それで、お姉ちゃんのも作ってあげるね!
――お姉ちゃん!
「明日ね」
ニーナの吐息を耳に感じた気がした。
雨空に向かって、シャオリーは叫んだ。
顔中が火照って、瞳からは熱を持った涙が止めどなく流れ落ちる。
大声を張り上げて、シャオリーは泣いた。
今までため込んでいたものを全て外に押し出すように、力の限り泣いた。
何度も何度も、ニーナの名を呼びながら。
エドとアルは最初、神妙な表情をしていたが、あまりの泣き方にやがて顔を見合わせて苦笑を漏らした。
呆れたように笑いながら、多分、彼らも泣いていた。
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