03.錬金術師の苦悩
(2/10)
翌日、天気はあいにくの曇り空だった。
遠くで雷鳴も聞こえている。
「今日は降るなこりゃ」
エドが空を仰いで呟いた。
アルが玄関の呼び鈴を鳴らし、いつものようにドアを開ける。
「こんにちはー。タッカーさん、今日もよろしくお願いします」
しかし、家の中は真っ暗で、物音も聞こえてこない。
三人は怪訝な顔をして互いを見た。
「誰もいないのかな?」
とりあえず家の中を見て回ることにした。
窓から入るわずかな明かりを頼りに、広い家を歩き回る。
「タッカーさーん」
「ニーナ?」
声を上げ、二人を探しながら、シャオリーは自分の気持ちが塞いでいることに気づいた。
なんだか胸が重い。
シャオリーは自分が単純であることを知っていた。
晴れていれば気分がよく、曇りや雨なら気持ちが沈む。
昔からそうだった。
今日の天気は曇り。
だから、気分が乗らないのだろう。
シャオリーはそう自分を納得させた。
資料室を確認し、研究室を覗き込む。
しかしそこにも二人の姿はない。
シャオリーはいよいよ気分が悪くなっていた。
足が鉛のように重く、地面に吸いついて離れない。
一歩踏み出すのに全神経を集中しなければならなかった。
ある部屋の前に来ると、三人は扉が開いていることに気づいた。
中で何かがキラリと光る。
目を凝らすと、それがタッカーの眼鏡だとわかった。
「なんだ、いるじゃないか」
エドがホッとした声を出す。
その声に反応して、タッカーが三人に振り向いた。
「ああ、君たちか」
その声はどことなく浮き立っていて、口元は締まりなく開いている。
「見てくれ。完成品だ」
そう言ってタッカーは両手を広げた。
自らを誇示するように胸を張る。
彼の足元には、ライオンほどの大きさの動物が座っていた。
(2/10)
*←|→#
[bookmark]
←back
[ back to top ]