黄金の草原 | ナノ

03.錬金術師の苦悩


(1/10)


エド・アル・シャオリーの三人は、毎日のようにタッカー家へ通った。

初日の帰りの馬車の中で、ニーナとシャオリーのやり取りを聞かされていたエドとアルは、迎えが来るまでの小一時間程度、ニーナと遊ぶ時間を設けるようになっていた。

今日も、あと三十分もすれば、二人が玄関から飛び出してくるだろう。





すっかり打ち解けたシャオリーとニーナは、まるで仲の良い姉妹のように毎日じゃれ合っている。

事実、シャオリーは今や、ニーナを実の妹のように感じていた。

妹がいたらきっとこんな感じなんだろうな。

シャオリーはニーナを見て微笑む。

いや、実際、シャオリーには妹が大勢いるのだが、彼女たちは言ってしまえば他人よりも遠い存在である。

環境が特殊すぎたのだ。





「お姉ちゃんたちが来てから毎日すごく楽しい!このままずーっと、うちに来てくれればいいのに」

「ニーナがそういうならずーっと来るわよ!」

「ホント!?」

「ホント」

二人はえへへと笑い合う。

「お兄ちゃんたちも、ご本読むので忙しいのにいっぱい遊んでくれるよね!ニーナ、何かお礼したいなぁ」

シャオリーはニーナのいたいけな気持ちにジンとした。

遊びたい盛りの小さな子どもが、自分を構ってくれないことに文句を言うどころか、遊んでくれた相手の事情を察して感謝している。

優しい子だ。

「ニーナの気持ちだけで十分!あいつら、泣いて喜ぶわよ!」

「うーん、でもー…」

「そうだ!じゃあ何か手作りのプレゼントをするのはどう?私も手伝うわ!…っと…」

エドとアルが家の廊下を駆け抜けていくのが窓から見えた。

もう間もなく玄関を開けて外に出てくるだろう。

「…と思ったけど、今日は時間切れみたい。また明日ね?」

しかし、ニーナは首を横に振った。

「ニーナ、一人で作る!それで、お姉ちゃんのも作ってあげるね!」

シャオリーは、胸が熱く弾けるのを感じた。

ニーナに跳びつき、頬を両手で大きく揺さぶる。

「あなたのそういうところ好きよ、ニーナ!」

ニーナは笑い声を上げ、シャオリーに抱きついた。

「ニーナも、お姉ちゃん大好き!」

その後ろから、エドとアルが、アレキサンダーと共に駆け寄ってきていた。

ニーナはシャオリーに抱きついたまま、口元を耳に寄せる。

「お姉ちゃん」

「なあに?」

「お兄ちゃんたちには明日まで内緒だよ?」

「うん、わかった。明日ね」

「うん、明日ね!」








(1/10)

- 22/427 -

[bookmark]



back

[ back to top ]

×
「#学園」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -