02.綴命の錬金術師
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資料室に鳴り響く時計の音で、エドは我に返った。
周囲を見渡し、アルとシャオリーの姿が見えないことに気づく。
「アル!シャオリー!おかしいな、どこ行った…」
立ち上がろうとしたエドの真上に影が覆いかぶさった。
振り向いてその正体に気づいた瞬間、彼は既にそれに押し倒されていた。
「ぎにゃーーー!!」
本棚を曲がってきたアルと、アルに肩車されたニーナがその現場を目撃する。
エドの上に乗っていたのはもちろんアレキサンダーだ。
「あ、兄さん」
「『あ、兄さん』じゃねーよ!資料も探さねーで何やってんだ!!」
「ごめんごめん。休憩がてらニーナたちと遊んでたんだ」
「なごむなヨ!」
「あ、みんな見っけ!」
シャオリーが後ろからひょっこり顔を出した。
本棚とアルの隙間からシャオリーが垣間見たのは、エドがアレキサンダーにいいように顔を舐められているところだった。
「アレキサンダーもお兄ちゃんに遊んでほしいって」
ニーナが無邪気に笑いかける。
エドはハンカチで自分の顔を拭きながら少しずつヴォルテージを上げてゆく。
「ふっ…この俺に遊んでほしいとはいい度胸だ…。獅子はウサギを狩るのも全力を尽くすと言う…」
そこまで言うと、エドはアレキサンダーに向かって走り出した。
「このエドワード・エルリックが全身全霊で相手してくれるわ犬畜生めッッ!!!」
家の中とは思えない足音を響かせ、大量の埃を巻き上げながら、エドは走り去っていった。
一方のアレキサンダーは…完全に遊んでもらっている体である。
ニーナ以下ね…。
シャオリーはため息をついたが、ニーナが楽しそうに笑っているのを見て、役に立っているからいいかと思い直した。
夕暮れ時、エドたちを迎えに来たロイが目にしたのは、アレキサンダーに踏みつぶされたエドの姿だった。
「……何をしているのかね?」
「いや、これは資料検索の合間の息抜きと言うかなんと言うか!」
タッカーがエドに問い掛ける。
「で、いい資料はみつかったかい?」
沈黙したエドの顔中から汗が噴き出す。
「…………また明日来るといいよ」
タッカーは苦笑した。
ニーナはパッと笑顔になる。
「また明日来てくれるの?」
「うん!また遊ぼうね!」
シャオリーがニーナに笑いかけている横をアルに支えられたエドがフラフラと通過してゆく。
それを見てロイがエドの横につけた。
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