13.生贄の羊
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道中、ラッシュバレーでパニーニャという両足が機械鎧の女の子と出会ったことや、嵐の中、ウィンリィを中心に赤ちゃんを取り上げたことなどを聞いた。
「そりゃたいした経験だったわね」
「雷が落ちて、橋が落ちちゃってさ」
「向こう岸と距離があり過ぎて、錬金術じゃどうにもならなかったんだ。オレたち、何も出来なかった。な」
「うん」
「それでウィンリィが助産師をやったんだ?」
「うん。無事に産まれてきてくれてホントによかったよ」
「すごいわね。機械鎧技師なんて辞めちゃえばいいのに」
「それじゃオレの腕は誰が直すんだよ」
「ラッシュバレーで別の技師でも探せば…」
会話の途中ではあったが、シャオリーは本能の命ずるままに「その」方向を振り返った。
突飛な行動に、三人は目を丸くする。
「なんだよ急に…」
「用事を思い出したわ。明日ホテルに行く。今日はここでお別れにしましょ」
「用事って…あっおい!」
シャオリーは走り出した。
もう三人のことは頭になかった。
頭にあるのは、「あの」気配のことだけだった。
後に残された三人はしばらく唖然と立ち尽くしていた。
「…行っちゃった」
「用事って何なのかしら?確か、あんたたちとダブリスに行かなかったのも何か用事があるからって言ってたわよね」
「ああ。あいつ、セントラルで何やってんだろうな」
「まあ、明日ホテルに来るって言ってたし、その時聞いてみようよ」
「そうだな」
気配の残滓を探すようにシャオリーの去って行った方向を見つめる。
やがてエドが鞄を持ち直した。
「そうだ、先に軍部に顔出してくるか。ヒューズ中佐って軍法会議所だよな?」
「うん」
「わぁ、ヒューズさん久しぶりだな。元気かな?」
三人は頷き合って、再び歩き出した。
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