13.生贄の羊
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それから大佐は、昼夜、軍の書庫にこもって情報収集の日々を送っていた。
主にバリーから聞いた話の裏を取っているようだ。
家にも帰ってこず、数日に一度、着替えなどの日用品を届けてほしいという電話が入るだけだった。
シャオリーもシャオリーで行動を開始していた。
とはいっても、大佐の情報収集の進捗状況をチェックしながら、あの気配が現れないかどうかセントラルの街を巡回するという途方もない方法だったが。
今のところ収穫はない。
けれど、やらないよりはましだ。
そんな中、エドから電話が掛かってきた。
「明日そっちに着く。ウィンリィも一緒だ」
「そう。じゃ、駅で落ち合いましょ!」
「わかった。明日な!」
翌日の午後、シャオリーは駅へ向かった。
しばらく待っていると、ホームに列車が入ってくる。
降りてくる乗客の中に、エドたちの姿を見つけて走り出した。
「エド、アル、ウィンリィ!」
向こうもシャオリーを見つけて大手を振る。
「久しぶりね。元気だった?」
アルが頷いた。
「シャオリーは?」
「まあまあよ。聞いたわよウィンリィ。ラッシュバレーで機械鎧の修行始めたんだって?調子はどう?」
「順調!毎日新しいことの発見で楽しいわ!」
「そう!でもあんまり上達すると、今以上にこいつらにこき使われるわよ」
「そん時はその分だけ整備費ふんだくってやるから問題なし!」
「おいおい…良心価格で頼むぜウィンリィ」
「それはあんた次第なんじゃないのエド。さ、こんなところで立ち話もなんだし、場所を移しましょ。荷物もあるし、ホテルへ行く?」
「そうだな」
「もう取ってあるの?」
「うん。来る前に。シャオリーはどうする?一応ウィンリィの部屋をツインで取ってあるけど」
「部屋なら一緒でいいっていつも言ってるのに。ま、今回はウィンリィがいるからいいか。でももったいないわよ」
「な、な、何言ってんのシャオリー!一応こいつらも男なんだから…!」
「ああ、ウィンリィが気になるなら、ちゃんと別の部屋にしてもらうわ」
「き、気になるっていうか、私はシャオリーを心配して…!」
騒ぎながらホテルに向かって歩き出す。
「あ、でも今日は荷物持ってきてないし、大佐のところに帰るわ。明日から合流する」
大佐の名前を出してしまって、しまったと思った。
話の派生する先が透けて見える。
「そういえばシャオリー、大佐と一緒にいるんだったよね」
「何でだ?前はヒュ…」
「ほら、ぐずぐずしてないで行くわよ!」
シャオリーは聞こえないふりをして歩調を速めた。
「あっ、おい、待てよ!」
自分の口からは言えない。
…とても、言えない。
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