12.無骨な亡霊、再来
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バリーの話は、エドから聞いていた話とほぼ一致していた。
というよりも、彼らとより近い立場にあったはずのバリーの話は、エドの話と大差がなかった。
つまり、シャオリーにとってはあまり収穫がなかったということだ。
だが、大佐たちはそうではない。
全てが初めて聞く話だ。
「まとめるとだな…第五研究所では、不完全ではあるが賢者の石が作られていた。材料は生きた人間だった。研究所はすでに崩壊し、証拠を探そうにも無理…」
大佐はシャオリーに視線を寄越す。
シャオリーは肯定の意を込めて頷いた。
「軍の施設と研究員が関わっていた…となると、軍の上層部も一枚噛んでいるな。それから、ラストとエンヴィーという者が軍と繋がっている…その二人の容姿は?」
「ラストっつーのはこう…ボンキュッで斬ったら柔らかそうなの。エンヴィーは…あー…少し骨っぽそうだな。身体も小さいし、斬りごたえなさそうな…」
大佐が絶句しているのを見かねて、シャオリーは情報を捕捉する。
「ラストは胸元、エンヴィーは左ももにウロボロスの入れ墨があるわ。それより、そいつらのこともっと詳しく知らないの?何者なのよあいつら」
バリーは不服そうに顔を逸らした。
「オレはいたいけな死刑囚だぜ。ただ鎧の姿にされて、ただ命令されてあそこにいただけさァ。それ以上のことは知らねえよ。もっとも、ヨンハチはもう少し詳しく知ってたみてえだがな」
ヨンハチとは、エドが賢者の石の練成陣が描かれた部屋で闘ったという死刑囚だ。
ふむ、と大佐は顎に手を添えた。
「お前の魂を練成したのはそいつらか?」
「いいや、研究者どもの仕事だ。それに、オレのは練成とはちょっと違うな。生きたまま身体からひっぺがされて、この鎧に移されただけさァ。なんせ無理矢理ひっぺがすもんだからな、その苦痛たるや…サクっと死刑にしてくれた方が幸せだと思ったぜ」
ファルマン准尉が大佐に囁く。
「その研究者を調べてみましょうか?実験を指示した者の素性がわかるかも…」
「無理だな」
バリーが話に割って入った。
「そいつら石の材料に使われちまったよ。研究所が崩壊する数日前にな。誰ひとり残ってやしねェよ」
一同、眉を顰めたまま固まった。
大佐が苦々しげにため息をつく。
「口封じ兼研究材料か。無駄のないことだ」
「もう石を作る必要がなくなったということでしょうか?」
ホークアイ中尉が呟いた。
「軍上層部絡みの組織と賢者の石…」
要点を整理すると浮き彫りになるのは、この二つの、不可解かつ意味深な繋がりだ。
そして、どうやらバリーから聞き出せる情報はこれで全部のようだった。
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