生きている意味

04.焼肉Qにて


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薄暗い室内から外に出た途端、刺すような空の青さに瞳を射られ、慌てて額に手をかざす。

病院に来たときよりも日差しが強くなっている。

太陽の光は、暴力的と言ってもいいくらい燦々と降り注いでおり、まだまだ容赦なく気温を引き上げそうだ。





鳥が一羽、光を放つ太陽に影をつくる。





病院前の一本道に人は見当たらず、道を挟んで目の前にある森は、沈黙を守っている。

しかし、この里のあちこちで、子どもたちが声をあげて遊び回り、母親が洗濯物を干している姿を予感させる、穏やかな空気に満ちていた。








ランニングをしているらしい老人が通りかかり、おはよう、と声をかけてきた。

おはようございます、とペコリお辞儀をする。

暑いから気をつけて、とチョウジが声をかけている。









里は今日も平和だ。












特に行く当てのなかった二人は、なんとなく、先ほど出会ったベンチの方へ向かって歩き出した。

さわさわと木々がざわめく。

シカマルはつられるように森を横目で見上げた。

身体は汗ばむほどであるのに、木ノ葉の揺れる音を聞くだけで涼しく感じるのはなぜだろう。





視線をずらすと、何か言いたげな様子のチョウジと目が合った。

「ねえシカマル。あの子、どうするの」

その質問はこちらがしたいくらいだと、シカマルはため息をつく。

あの大雨の日から、一体何回ため息をついただろうか。

もしも、一年間でつけるため息の量が決まっていたとしたら、ここ数日間で、そのうちの半分は使ってしまっただろう。

「どう…って言われてもな…」

返答に詰まり、頭を掻く。

「しばらくは病院にいることになるだろうが…その後は本人次第だろ。身元を洗いざらい吐いて、そこに帰りたいって言えばそこまで送っていって終わりだ。ずっと今日みたいな調子だったらどうすっかな…」

まったく、五代目も随分な難題を押し付けてくれたものだ。

こんなことなら、高度な暗号文を解かされているほうがよっぽど気が楽というものである。

処遇を任せるといわれても、自分にはどうしたらいいのか皆目検討もつかない。





――待てよ。





処遇を任せる、ということは、自分の好きにしてよいということではないか。

自分が直接少女の面倒を見るのは、どう考えても最善の策とは思えない。

ならば、他の方法を取ればいいのだ。

「女は女に任せるのが一番だ、いのんとこにでも預けてぇところだが、あいつはこの間長期任務にでかけちまったからなぁ。サクラにでも頼むかな」

「いいの?綱手様はシカマルに任せたんでしょ」

「そうは言っても、オレがあいつに何か出来るとも思えねーし、女同士の方が打ち解けるのも早いだろ。少しでも早く身元をはっきりさせるためにも、これが一番だ」

「まあシカマルがそういうならいいけどね」





だが、あの少女には不可解な部分が多い。

サクラに任せて大丈夫だろうか。





チラリ、頭をよぎる。





背後に何かの存在があるかもしれない。

何もわからない状況で他人にこの件を投げるのは危険なのではないだろうか――





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