06.サクラと少女と拙い会話
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お互い次の言葉が見つからず、なんとなく沈黙する。
笛の音のような、心地よい鳥の声が響いた。
昨日に引き続き、本日も快晴だ。
熱気を含んだ風が、撫でるように頬を通る。
アカデミーの通りに出ると、生徒と思しき子どもたちが、術の練習をしたり、敷地内の草花で冠を作ったりと、思い思いに過ごしていた。
ちょうど食休みの時間である。
二人は、火影の執務室のある建物の前までたどり着いた。
「わざわざここまでありがとう」
「いや、付き合ってもらったのはこっちだかんな」
軽く手を振って去ろうとするシカマルに向かって、サクラが声をかける。
「もし」
シカマルが顔だけ振り返る。
「退院の日までに彼女が答えを出せなかったら、どうするつもりなの」
シカマルは小さく肩を竦めた。
「とりあえずはうちで面倒見るしかねーだろ。むしろ、今の状態のままじゃ、希望があったとして、聞いてやれるかどうかわかんねーよ」
「どういうこと?」
「『もう一人の人間』の存在の有無、そいつとの繋がりがわからない以上、こっちの監視下に置いとかねーと危険だってことだ。相手が何らかのアプローチをかけてくるとも限んねーからな。里にとっても、あいつにとっても、だ」
サクラはシカマルの言葉を聞いて笑みをこぼした。
そうだ、シカマルはこういう人だった。
いつもめんどくさそうにしてて、薄情に見えるけど、きちんとみんなのこと考えてる。
私がそんなに心配することもないのかもしれない。
「とりあえず、親に相談してみるわ。今日はありがとな」
再び、気だるげに肩を落として歩き出すシカマルの後姿をサクラは笑みを浮かべながら見送った。
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