14.動き
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この結果をどう見るべきか。
シカマルは床を見つめたまま廊下を歩いて行く。
何かカラクリがあるのだ。
一つ一つの事象を丁寧に検証すれば、何かが見えてくるはずである。
落ち着いて、もう一度この件について考える必要があるな。
「おっと」
頭を働かせることに集中していたシカマルは、前方から歩いてくる人物に気づかず、思い切りぶつかってしまった。
「す、すいません」
「おう、気をつけろよ」
暗号部の人間のようだ。
大して気にする様子もなく、会話をしながら通り過ぎていく。
「そうだ、さっき鉱山集落から戻った鷹が羽を怪我してたんだった。手当てしてやらなきゃ」
「珍しいなぁ」
「擦り傷程度だけどな」
「寄り道でもしたかぁ?」
「ハハハ。どっかに引っかけたのかな?」
シカマルはチラリと振り返り、再び思考を巡らせ歩き出した。
一歩建物の外に出ると、途端に目の前が真っ白に染まった。
陽射しの勢いに負けて瞳を閉じる。
今日はまた一段と暑い。
こういう日は、室内で大人しくしているに限るというものだ。
幸い今日は任務も済んでいる。
シカマルはとっとと家に帰ることに決めた。
鉱山集落の件について、洗い直さなければならない。
自室に戻ったシカマルは、ゆっくりとベッドに身を投げ出した。
見慣れた天井に心が緩む。
しばしの間、無心で天井を見つめた。
まず起点に立ち返ってみよう。
問題の鉱山集落。
山岳地帯の小さな集落で、昔は鉱物の採掘が盛んだった。
しかし、先の大戦で鉱物を採り尽くし、村は疲弊。今では高齢者ばかりの住まう過疎地となっている。
はずだった。
しかし、最近その集落に人口が流入している様子があった。
廃れた村への人口流入。
不審な動きを警戒し、里は暗部の諜報班を送った。
が、暗部からの報告は不可解なものだった。
当初の報告はこうだ。
『村人は村の人口が増加していることを把握していないようである』
一見、何が問題なのかと問いたくなるかもしれない。
自分とて、里の人口の増減を把握しているかと言われれば、そんなわけはない。
人口が多すぎるからだ。
しかし、鉱山集落は話が別だ。
何しろ人口が極端に少ないのだ。
住人同士の結びつきも強く、どこそこの誰が何をした、といった類の話は筒抜けなのである。
新顔が加われば、それはモノクロの絵画に赤い点が落ちたかのごとく鮮明に浮き出るのだ。
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