13.任務
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「何故だ?」
サワトは落ち着いた声で、ゆっくりとアスマに返答した。
「人質を人質としてみれば足手まとい以外の何物にもならない。けれど、見方を変えれば、それを突破口にすることもできる。忍の世界とはそういうものだと、ボクは思っています」
アスマはため息をつく。
「自分の命を投げ出すことが、突破口か?」
サワトは肯定もせず、否定もせず、黙ってアスマを見返す。
「お前は昔からこういうところがあるな。いいか、忍たるもの、いかなる窮地にも可能性を見出せなければならない。簡単に諦めることは許されねえんだ。よく覚えとけ。なにより」
アスマは静かに聞き入る三人に視線をやる。
「仲間が悲しむ」
つられて三人に視線を移すサワトに、チョウジは頷き、サクラは頬を緩め、シカマルは顎を掻いた。
そこには同じ想いがある。
サワトはしばらく考え込むような表情をしていたが、その想いを汲んでか、照れたように視線を逸らした。
「わかったか?少し考えろ」
「はい」
サワトは笑みを浮かべる。
こいつ、笑ったな。シカマルは思った。
「ありがとうございます」
そう言うサワトに手を振り、四人は病室を出た。
「サワト、笑ってたね」
チョウジが嬉しそうに声を掛ける。
「ああ」
シカマルもなんとなく明るい気持ちになって相槌を打った。
サワトは普段からヘラヘラとよく笑う。
しかし、それらのほとんどは愛想笑いで、真実彼が笑う姿を目にするのは意外に少ない。
他人には見分けがつかないかもしれないが、今日の彼の最後の笑みは、彼の心からの笑みであった。
長年付き合ってきた自分にはわかる。
アスマはすげーな。
シカマルは前を歩く無骨な上司に、改めて尊敬の念を覚えたのであった。
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