迷い猫を捨てないで | ナノ

11.四の五の言ってないで持ってこいや!


調査兵団が壁外調査に出掛けて数日が経った。

イルメラは変わらず、兵団本部と店を行き来する生活を続けている。

店は順調、おまけに兵団が壁外遠征に赴いている時はここぞとばかりに大掃除をするものだから、大忙しだった。

今日も今日とて、本部での雑務を片付け、イルメラは店へと向かう。

そんな道すがら、ひどく慌てた様子の従業員、ブルーノと出くわした。

「イルメラさん!大変です!」

「どうしたの?そんなに急がなくても丁度これから向かうトコだよ」

「そんな悠長な話じゃないんですよ!いいからとにかく急いでください!今はまだ店先で食い止めてますから!早く早く!!」

従業員は思い切りイルメラの腕を引く。

「あだだだだ!!千切れる!千切れる!!行く!行くよ、行くから!!」

イルメラはわけが分からないまま走り出した。

「それで?何があったの?」

「商会の奴らです。うちの店に難癖つけてきてます」

「ああん?あそこは商会の専有地区じゃなでしょー?」

「だから難癖だって言ってるんです!臭いとか、景観が台無しとか、品位が下がるとか、そんなことですよ!」

「ふん!くだらん!お前らのツラァ鏡で見てから物を言えってんだ!!」

「な、何ぃ!?もう一度言ってみろ!」

イルメラは現場に到着するや否や、商会の男たち(ひょろと小太り二人)に挑みかかっていった。

そして、道中交わした会話をそのまま投げつけたのであった。

「はあ!こんな遠回しな物言いじゃわかりませんかあ!なら表現を変えましょう!あんたらの方がうちの子たちより臭いし、醜いし、下賤だって言ってんだよ!!」

小太りの男は色めきたった。

「言わせておけば…!お前ら、誰から資金援助受けてると思ってんだ!?」

イルメラは真顔に戻って深々と頭を下げる。

「それにつきましては、深く感謝申し上げます。まあ、そちら様が憲兵団と問題を起こして、副団長に泣きついてきていることも存じ上げておりますがね」

「ぐ…」

どちらが悪人かわからないドス黒い笑みを浮かべて、イルメラは胸を張った。

「とにかくお引き取りください!こんなところで嫌がらせしてる暇があったら、商売に精を出せば!?」

「そうはいかねぇなあ!」

「しつっこいですねえ!ブルーノ!アレ!例のアレ持ってきて!!」

ブルーノは頬を引きつらせる。

「アレ、ですか…?」

「アレよ!!」

そわそわと体を動かしながら、それでもなかなかブルーノは動き出そうとしない。

「…本当に?」

「本当に!!」

「…いいんですね?」

「いいっつってんでしょ!!」

諦めたように肩を落として、ブルーノは店内に消えた。

そして商会とイルメラの視線が火花を散らす中、手に小型砲のようなものを抱えて戻ってきた。

それを見た商会の男たちは、さすがにたじろいだ。

「お、おい!何をするつもりだ!?」

「ふっふっふ…こんなこともあろうかと、秘密兵器を開発しておいたんだな!これが!」

イルメラはブルーノからひったくるようにして砲を肩に担ぐ。

「おっ、おい!よせ!自分が何をしようとしているかわかっているのか!?」

「十分にねっ!どおりゃああ!!」

ドバァッという音と共に、一面が真っ白になった。

辺り一面に細かい粒が飛び散る。

「ぶわっ!何だこりゃ!?げほっ、ぺっ…ん?しょっぱ…し、塩!?」

「散塩砲だ!高級品だぞ、ありがたく思えこのヤロウ!ついでに浄化されてしまえ!!」

今の音を聞きつけて、何だ何だと人々が集まって来る。

「く、くそぉ…このままで済むと思うなよ!!」

男たちはザコの去り際の見本を見せつけるようにして逃げていった。

「ざまあみろ!!」

その様子をブルーノが途方に暮れた顔で見送っていた。

「本当にこれでよかったんだろうか…」





(20140919)


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