迷い猫を捨てないで

04.期待してるのはそれだけだし


「俺は訓練がある。直接運営には関われん」

「はいはい、始めから期待してないですよ。兵長に期待してるのは資金の獲得だけです」

「兵団に金が無いと言っていたのは当のお前自身だったと思うが」

「だから、そこを何とかしてくださいとお願い申し上げてるんです。慢性金欠の現状を打開するための策とはいえ、店舗経営には初期経費がかかるんです。その程度のこと、おわかりでしょう?」

「実現の目処が立たない案を意気揚々と会議に上げてくるお前の気が知れないな」

「四の五の言ってないで、しっかり金つかんで来て下さい!この子たちを捨てられたくなかったらね」

一カ所に集めてきた動物たちを背後に、イルメラはリヴァイを脅しつける。

リヴァイの反論はない。

効果は抜群だ!

「とりあえず、トロスト区にある兵団の倉庫を改装して使います。中身は古城に移しますよ。少し遠くなって不便だけど、仕方ないですよね?」

「ああ」

素直でよろしい。

「では、とにかくやってみます。上手くいくように祈っててください」

「ふざけてるのか。必ず軌道に乗せろ」

「兵長にいただける資金に期待しております」





「と、いうわけで、あんたたちは強制的にチームのメンバー決定!」

リヴァイ班の面々を前に、イルメラはふんぞり返った。

「無茶苦茶だ!」

グンタが堪らずタメ語。

壁外に広がる広大な世界のごとき心でイルメラはそれを許した。

「だから、無茶苦茶なのはあんたたちの上司だっての」

「しかし、自分たちには訓練がありますし…」

エルドがもっともらしい意見を述べる。

しかし、イルメラはそれにもケロリと答えた。

「問題ないね。あなたたちの無駄に長い清掃の時間と自由時間をもらっただけだから」

「そんな!」

ペトラが叫ぶ。

「横暴っすよ!」

オルオが悲鳴を上げた。

「だから、その台詞は兵長に言えっての」

とにかくもう決まったことだから、とイルメラは一切の苦情を立ち切った。

「さ、気が済んだらとっとと行くよ!」

気が済んだはずはないのだが、リヴァイ班一同の顔は降参の色に変わっていた。



わんにゃんカフェの運営拠点となるトロスト区の元兵団倉庫に到着した一行は、殺風景で色気もへったくれもない室内を見て、しばらく途方に暮れていた。

「で、俺たちは一体何をすればいいんです?」

エルドが一番に立ち直って、イルメラに視線を向ける。

つられるように他の三人もイルメラを見た。

イルメラは一つ頷く。

大きく息を吸い込んだ。

「発表します!」

四人は表情を強張らせる。

そこには若干の緊張があったが、そのほとんどはうんざりという感情に占められている。

もちろんイルメラはそんなことはきれいさっぱりスルーした。

「ペトラはお店のメニューの考案。おいしそうなの頼むね。エルドは内装担当。センスありそうだし。グンタは建物の修繕。外壁もきれいに塗っといてね。オルオはエルドとグンタの補助。馬車馬のように働いて」

オルオが何やら喚いているが、他の三人はとりあえず納得したようだ。

「イルメラさんは何をするんです?」

グンタが尋ねる。

「私はわんにゃんのためのエサとか小道具揃えてくる。みんな、頼んだよ!」

三人は頷いた。

オルオはまだ騒いでいる。

もちろん無視する。

「それじゃあ…ゴー!!」





(20140820)


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