impatience
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「今は止そう」
そういえば、オレが話し掛けようとしてマルコが止めたのは、ライナーと二人でいる時じゃなくて、ベルトルトと二人でいる時だったような気がする。
オレはルーラとライナーが付き合ってるんだと思ってた。
三人でいる時も、話してるのはほとんどあの二人だったし、ルーラがライナーに相談ごとか何かをしているのも何度か見かけた。
周りの奴らも、そういう関係を疑うならあの二人だったし、そうでない奴らは仲のいい間柄くらいに思っていた。
でも、違ったんだな。
調査兵団に来て間もないある夜、どうも寝苦しくて外の空気を吸いに出たオレは、ベンチに座っているルーラとベルトルトを見つけた。
夜抜け出して外に出ている奴らは結構いたし、あの三人も時々ああして座っていたから、特段思うところはなかった。
今日はライナーいねぇのか、くらいのものだ。
よぉ、お前らも眠れねえのか?
あわや声を掛けそうになったところで、ルーラがベルトルトの方を向いた。
ベルトルトもルーラの視線に気づいて顔を傾ける。
ルーラの唇がベルトルトの頬に軽く触れた。
ベルトルトは焦ったように何度も瞬きをする。
ルーラはくすくすと笑っている。
しばらくの間の後、今度はベルトルトの方からルーラに口づけた。
オレは踵を返して大股で歩き出した。
お前ら!
外で何やってんだよ!
ちくしょう!
何でよりによって確実に圏外だと思ってたベルトルトの絶賛青春シーンを目の当たりにしなきゃならねぇんだ!
オレだって、オレだってなぁ!
ミカサなんか好きにならなきゃ今頃…!
ライナー!
お前何やってんだ!
あいつらが二人でよろしくやってる今、お前は何をやっていやがる!!
夜風に当たる気分もすっかり失せたオレが宿舎に戻ると、驚いた表情のライナーと出くわした。
「おい、ジャン、お前…何で泣いてるんだ?」
「お前のせいだ!ちくしょおお!」
豆鉄砲を喰らった鳩のような顔をしたライナーを尻目に、オレは自分の布団にダイブした。
それから数日、ライナーが何か言いたそうにこちらを見ていたが、もちろんシカトを決め込んだ。
あの時は、幸せそうに見えたんだけどな。
病的に白い顔をしていたあいつは、糸が切れたみたいにその場に倒れ込んだ。
真っ先に駆け寄ってきたのはライナーで、ベルトルトは真っ青な顔をして拳を握りしめたまま、その場から動かなかった。
おいおい、そこはお前が来るところじゃねーのかよ。
傍に屈もうとしたライナーを制してルーラを担ぎ上げると、統括のネスに小さく頭を下げて、オレは医務室へ向かった。
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