at the time of choice 番外編

like a bird eating stars


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遠くからルーラを呼ぶ声が聞こえた。

同時にそちらを見やると、サシャが手を振っている。

ルーラは、行くねと笑って、パタパタと駆けていった。

まるで鳥が飛び立つように。



「それで、マルコは星になるまでは彼女の宿り木をやるつもりなの?」

思いがけず近くで声がして、僕は驚いて振り返った。

そして苦笑する。

「アルミン。聞いてたのか」

「僕はただ、そこのベンチで本を読んでいただけだよ」

僕は恥ずかしさをごまかすために頬を掻く。

アルミンは、今までルーラが座っていた位置に腰を下ろした。

「…羽を休めに戻ってきてくれれば、それでいいんだ」

「いつまでも、同じ枝に戻ってくるとは限らないとは思わないかい?」

「そうしたら、今度は枝に実をつけて待つさ」

「ベルトルトと二人でやってくるのを?」

おっとりした口調でずいぶん痛いところを突く。

僕は苦笑いした。

けれど、ジャンにも言わず、誰にも言わずにきたそれに気付き、そっと隣で話を聞いてくれたのはアルミンだった。

彼が僕を心配してくれているのがわかるから、苦痛ではない。

僕は少し考えて口を開く。

「僕も聖人君子ではないから、ルーラが幸せならそれでいいとだけ思っているわけではないんだ。けれど、そう思う気持ちは確かにあるし、何より厄介なことに、今のポジションもなかなか居心地がいいんだ」

アルミンはため息をつくように笑った。

「わからなくはないよ。でも、辛くはないの?」

全然辛くないと言えば嘘になる。

でも僕は、そういう気持ちを隅に追いやることができた。

「僕はそういう感情をコントロールするのが得意みたいなんだ」

アルミンは眉を落として微笑んだ。

「それは…損な性格だね」

僕も、そうかもね、と言って笑った。

「けど、誰かが行動を起こせば、きっとあっという間に関係が変わってしまうよ。今のところ、その可能性が一番高いのはルーラだけど、どうせ変わってしまうなら、行動を起こすのがマルコでもいいんじゃないかな」

アルミンは顔を上げて、僕の顔をまっすぐに見据えた。

「マルコ、僕らは兵士だから、いつどんなことが起こるかわからない。もちろん、だからこそ何もしないっていう選択肢もあると思う。だけど、後悔だけはしない方がいいと思うんだ」

アルミンは時々こういう目をする。

普段は穏やかに一歩後ろに控えていることが多いので、彼のこういう凛々しい視線を浴びると、思わず身が引き締まる。

彼の瞳の奥には、こんなにも強い意志が宿っているのだ。

しかも、彼が指摘するのは、自分でわかっていて曖昧に濁していたところだったから、僕は何も言えなくなってしまった。

「ごめん」

アルミンが慌てて謝った。

「口を出すつもりはなかったんだ。つい」

その顔はもう、いつもの彼だ。

「いや、いいんだ。わかってるよ、アルミン。わかってるんだ。ただ…今はまだ、もう少しこのままでいたいと思ってる」

あと少しだけ、せめて、訓練兵として共に生活している間は、この関係を壊したくない。

それはまるで羊水の中のような、温かくて心地よい空間だから。

アルミンは頷く。

「僕が言いたいのは、最後はマルコのしたいようにすればいいってことだから」

僕は目尻を緩めた。

「ありがとう」





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