at the time of choice

27.please don't refuse me(reprize)


ベルトルトは俯いたまま、こちらを見ようとしなかった。

ルーラはそっと彼に近寄り、手を伸ばす。

それを避けるように、彼は顔を逸らした。

「拒絶しないで」

ベルトルトはハッとしてルーラを見る。

「お願い。私を拒絶しないで」

あの日のあなたと、多分私は同じ目をしているだろう。

ルーラはベルトルトを抱いた。

ベルトルトは抵抗しなかった。

「この先、どんなことがあっても…お願い…」

「僕は…君を…」

「私も、あなたを選べない。だから、おあいこ。それでも、一緒にいたい。あなたは?」

「僕…僕も…一緒にいたいよ」

ルーラは微笑した。

「よかった。嬉しい」

ルーラが額を合わせると、ベルトルトはギクシャクと笑みを浮かべた。

ルーラがふふ、と声を漏らしたのをきっかけに、二人は笑い合った。



戸の外から足音が響いてきた。

ルーラとベルトルトは慌てて距離を取る。

ルーラはぐしゃぐしゃになった顔を素早く拭った。

三人は戸を振り返る。

「おいライナー!ベルトルトとルーラもいるか!」

ユミルの声だ。

ライナーが声を張る。

「こっちだ!」

ユミルは血相を変えて飛び込んてきた。

「屋上へ上がれ!巨人がわんさと湧いてやがる!」

三人は絶句する。

弾かれるように部屋を飛び出した。



塔には巨人が大量に群がっていた。

巨人は夜は活動しないはずだ。

個体差はあれど、三時間もすれば動きが鈍くなる。

少なくともルーラはそう習っていた。

だが、目下の巨人たちはどうだ。

こんな夜半に、こんなにも活発に動いている。

「一体…」

先に到着していたクリスタとコニーと驚愕の視線を交わした。

「どういうこと…!?」

「オイ…!あれを見ろ!!」

コニーが叫ぶ。

「でけぇ…何だ…あいつは…」

視線の先にいたのは、異様な巨人だった。

いや、巨人と言えるのだろうか。

それは全身を体毛に覆われていた。

獣と言った方がしっくりくる。

両の手が恐ろしく長い。

そして、でかい。

超大型とまではいかないが、20Mくらいありそうだ。

「何なの…あれ…」

ルーラは振り返り、そして動揺した。

ベルトルトとライナーの表情は異常だった。

恐怖?

興奮?

畏怖?

それとも全てだろうか。

ルーラには判断がつかない。

ただ、確かのは、二人はこの獣の巨人のことも何か知っているということだ。



その場で放心してしまいそうになったが、実際それどころではなかった。

すぐに上官からの指示が飛ぶ。

塔への入り口はすでに破壊されていた。

巨人が侵入してきているのだ。

立体機動を持たない新兵たちは、塔内の安全を死守することを役目とされた。

外の巨人を上官たちに任せ、ルーラたちは走り出す。

「巨人がどこまで来てるか見てくる!お前らは板でも棒でも何でもいい!かき集めて持ってきてくれ!」

真っ先に下階に駆け出したのはライナーだった。

皆が止める間もない。

「待てよライナー!待つんだ!」

慌ててベルトルトが後を追っていった。

ルーラは一瞬唖然とする。

しかし、すぐに気を取り直し、残ったメンバーを振り返った。

「私は二人を追う。万が一巨人と出くわしても、三人なら運がよければ助かる。巨人の手は二本しかないからね。みんなは武器をお願い」

迷っている暇はない。

一同は頷き合って行動に移った。

「ライナー!ベルトルト!待ってベルトルト!」

ベルトルトはチラリと後ろを振り返る。

「あなたたち何を考えてるの!?」

一瞬、巨人を招き入れるつもりなのかという考えが過ったが、そんなはずはないとすぐに切り捨てた。

彼らとて、人間の姿では巨人は脅威のはずだ。

「今はライナーに追いつくのが先だ!」

ベルトルトの声に頷いてルーラはペースを上げる。

が、途中に倉庫があったことを思い出し、立ち止まって中を漁った。

三叉槍が目についたので引っ掴んでまた走り出す。

「ここだあぁ!!何でもいいから持って来い!!」

ライナーの叫び声が響いてきた。

直後、彼が押さえつけている扉がひしゃげ、腕が飛び出してきた。

ルーラはゾッとして引きつった声を漏らす。

腕はライナーを絡め取ろうとするかのように蠢く。

ライナーは身を屈めてそれをかわした。

しかしこれでは、扉はいくらももたない。

「ああっ!」

ベルトルトが切迫した声を上げる。

「ベルトルトッ!これっ!」

ルーラは三叉槍を投げた。

ベルトルトはそれを受け取ると大きく振りかぶる。

「ライナー!」

ライナーは横目でベルトルトの姿を捉えると、頭を下げた。

扉を破壊して姿を見せた巨人の眼球に思い切り突き刺す。

巨人の動きが止まった。

ライナーも持ち手に手を添え、加勢する。

「ベルトルト!生き延びて帰るぞ…絶対に、俺達の故郷にな!」

「あ…ああ…!帰ろう!!」





(20131025)


- 28/37 -

[bookmark]



back

[ back to top ]

- ナノ -