06.please accept me
「ライナー、ルーラ」
二人は同時に顔を上げた。
掛け声とともに走ってくるのはベルトルトだ。
「どうしたの?もう講義始まるよ」
「あ、ああ…」
「もう行く。ありがとベルトルト」
ぎこちない雰囲気を感じ取ったのか、ベルトルトは二人の顔をまじまじと見る。
そして眉を潜めた。
「ルーラ、泣いてるの?」
「え、あ…」
ルーラは慌てて目をこする。
「何かあったの?」
「ううん。何も」
ベルトルトはライナーに視線を移す。
「ライナー?」
「い、いや、俺じゃないぞ。なんつーか、あれだ…」
ライナーはどう取り繕っていいのかわからないでいる。
ベルトルトはルーラの瞳を覗き込んだ。
そこから真実を汲み取ろうとするように。
「ルーラ?」
本気で心配してくれている。
その事実はルーラの胸を熱くした。
こんな自分でも、彼なら受け入れてくれるのではないか。
たった今、自分は彼を受け入れられるかどうか自信がないと思い知ったばかりなのに、彼には自分を受け入れてほしいと願う。
勝手すぎる。
それでも、彼に傍にいてほしかった。
ルーラはベルトルトに抱きついた。
突然の行動にベルトルトとライナーは驚いたが、ベルトルトはすぐにルーラの背に手を回した。
ライナーはそんな二人をさりげなく自分の背に隠す。
ルーラはベルトルトの体温を感じていた。
温かい。
ベルトルトの匂いがする。
すごく心地がいい。
安心する。
一度きつく抱きしめてから、ルーラはベルトルトから離れた。
「ありがと。元気出た」
ベルトルトは大きく瞬きを繰り返す。
「ホントに?」
「ホントに」
ルーラは破顔する。
「講義、始まるよ。二人とも、早く行こ!」
二人を待たずに走り出した。
ベルトルトとライナーは、顔を見合わせると、苦笑交じりに頷いてルーラの後を追うのだった。
(20131004)
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