04.夜な夜な格闘技
次の日、目の下に隈をつくったドリスは、うとうとしながら食堂の戸を開けた。
中は既に大賑わいである。
「ドリス、おはよう」
入口の近くに座っていたアルミンが手を上げた。
「おはよ、アルミン…」
「眠そうだね」
「まあ…」
隣のエレンが怪訝そうに見上げる。
「お前、傷増えてないか?」
「そう?」
「そうって…まさかホントにお前ら、夜な夜な格闘技やってんじゃねーだろうな」
「お前らってのは、もしかしなくても…」
「お前とライナーだよ」
「だよね。まあエレンのことだから、格闘技ってのは純粋に格闘技のことを言ってるんだろうけど」
「はあ?それ以外に何があるんだよ」
「ミカサかアルミンに聞いて」
エレンは首を傾げる。
「おいミカサ?」
「知らなくていい」
「アルミン?」
「う、うーん…」
なんだよ、知らないのオレだけかよ、と騒ぎ出したエレンに手を振った。
「どっちにしろ違うよ。じゃあ後でね」
ドリスは角のテーブルに空きを見つける。
「アニ、隣いい?」
「別にいいよ」
アニと軽く挨拶を交わし、腰を下ろした。
スープをすすり、パンにかぶりつく。
夕飯は当面スープのみになってしまいそうなので、朝食と昼食はしっかり頂かなければならない。
「もう少し落ち着いて食べられないの」
気付くと、アニが眉を潜めてこちらを見ていた。
「あ、ごめん。お腹空いてて」
「なら、もっとよく噛んでゆっくり食べるんだね。夜中何やってるのか知らないけど」
「ああ…」
ドリスは愛想笑いを浮かべる。
アニはつまらなそうに頬杖をついた。
「ま、私には関係ないけど」
「だ、だね」
「ただ、あんまり無茶なことしてると、訓練中に死ぬ羽目になるよ」
ドリスは目を瞬かせる。
もしかして心配してくれているのだろうか。
「肝に銘じておきます」
「じゃ、お先に」
「アニ」
「何?」
「ありがとう」
アニは特に返事をすることなく食堂を出ていってしまった。
アニと入れ替わるように目の前に影ができた。
パンを口に詰め込んだまま目だけ上を向くと、ライナーとベルトルトだった。
「おはよう、ドリス」
ベルトルトに挨拶をするため、ドリスは声を発するが、パンに遮られて何を言ったのかはわからない。
ライナーはドリスをしばらく眺めてため息をついた。
「昨日も行ったのか」
ドリスはパンを飲み込むと頷いた。
「…行った」
「あれで仕舞いにするんじゃなかったか」
「自然の摂理を重んじることは大事、とは言った」
ライナーは頭を掻く。
「どう違うんだ?」
ドリスもつられて頭を掻いた。
「ライナー、その話、別の機会にしない?」
「は?何でだよ」
「だってほら…」
ドリスは目で周囲を見るように促す。
「みんな見てるし」
ライナーはため息をついた。
が、今から席を移動すると逆に目立つので、大人しくその場でスープをすするのだった。
(20130916)
04.夜な夜な格闘技
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