爆ぜる炎舞う時
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超大型巨人と呼称される身長60M級の巨人の出現により、唐突に始まったシガンシナ区襲撃。
人類はウォール・マリアを奪われ、活動領域をウォール・ローゼまで後退させた。
あれから五年、活動拠点の最前線となったトロスト区に、超大型巨人は再び現れた。
その前夜、訓練兵団解散式を終えた104期訓練生たちは、今後属する兵団も定まらないまま、防衛戦に投入されることとなった。
巨人化したエレンの活躍により、ウォール・ローゼは死守された。
人類が初めて、巨人に勝利した戦いであった。
しかし、犠牲は多大だった。
同期も、たくさん死んだ。
彼らの亡骸は、生き残った兵士たちにより、彼らの目の前で火葬された。
104期生たちは自然と寄り集まり、燃え上がる炎を見つめていた。
みな、悲壮な顔をしているが、涙はない。
先ほどまで泣いていたコニーの目も、既に乾いていた。
次に進まなければならないのだ。
ここで命を終えた者たちのためにも。
涙に暮れている暇などない。
みんな、それを理解し、受け入れているのだろう。
これが、兵士なのだ。
わかっている。
わかっているのに。
みんなの隣に並ぶことができなかった。
情けない。
自分は弱い人間なのだと、焦燥感と劣等感に苛まれる。
彼らの死を巨人への憤怒に、戦い続ける覚悟に変える。
それが彼らにできる唯一の弔いだ。
最善の弔いなのに。
こんなところを見られるのだけは嫌だった。
けれど堪え切ることもできそうにない。
だから、小屋の陰に蹲った。
後から後から涙が溢れてきた。
漏れる嗚咽は、爆ぜる炎が消してくれた。
胸が痛い。
ここだけ巨人に食い荒らされたみたいだ。
身体中が、石のように重い。
このまま石になってしまえば、巨人に食われることもないのかもしれない。
いっそ抗わずにひと思いに飲まれてしまえば――
嫌だ。
死にたくない。
恐い。
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