あなたを忘れない
(3/9)
リアは堪らず飛び出した。
「アニ!探したじゃない!」
アニは驚いたようで一瞬動きを止めた。
「リア、あんたまで来てたの」
リアはそこで初めて気づいたかのようにアルミンを見る。
「げっ、アルミン!あんたも秘密の逢瀬ってわけ?クリスタ派だと思ってたけどね、あんたは。壁外調査中に場違いに呆けてたじゃない。ま、ジャンとライナーもだけど。あたしもいたってのに失礼しちゃうわ」
アルミンは口を大きく開けたまま笑いもしない。
醸し出す雰囲気が尋常ではないのだが、それには気づかない振りをする。
「告白の途中だったら申し訳なかったわよ。で、どうなの?そういう状況なの?」
アニは毒気を抜かれた様子で肩を竦め、首を振った。
「ならよかった。話は終わった?終わってなくても譲ってほしいんだけど。レディファーストって常識でしょ?」
アルミンはまだ固まっている。
頭をフル回転させて何かを考えているようにも見えた。
「アルミン?」
もう一度呼びかけたところでようやく反応を見せた。
しかし、リアを一瞥しただけで視線はすぐアニに向かう。
「まだしばらく時間があるから、後でもう一度来るよ。それまでに決めておいてくれ」
アルミンは静かに身を翻すと、雑踏の中に姿を消した。
「アルミーン、あたしたち共犯だからねー!誰かに話したら許さないわよー!」
リアは通りに大きく手を振った。
その横でため息が聞こえる。
「それで、あんたは何の用なの?」
リアはアニに向き直った。
「協力なんてやめときなさいよ」
アニは目を細めた。
胡乱な視線を覗かせている。
「聞いてたの。ずいぶんと悪趣味だね」
「せっかく憲兵になったんでしょ。他人にかまけて道踏み外すなんてバカみたいじゃない」
「へえ、心配してくれるんだ」
うっすら浮かべた笑みに映るのはやんわりとした拒絶だ。
しかし、シカトを決め込み、後を続ける。
「ま、あんた厄介事とか嫌いだし、自分から首を突っ込むとも思えないけど」
*←|→#
[bookmark]
←back
[ back to top ]