友よ…
(3/5)
「ねえジャン、自分で気づいてる?この三年間で、ジャンはずいぶん変わった」
「ああ。わかってるさ。でなきゃ、オレが調査兵なんかになるわけがねえ。あいつが…」
言葉が途切れた。
「あいつがオレに…」
ジャンは頭を抱え、俯く。
――怒らないで聞いてほしいんだけど。
マルコの声が、聞こえてくる気がした。
――ジャンは、強い人ではないから、弱い人の気持ちが、よく理解できる。
「あんなこと言わなきゃ…」
――それでいて、現状を正しく認識することに長けているから、今何をすべきかが明確にわかるだろ?
「オレは…」
――ジャンの判断は正しかった。だから僕は飛べたし、こうして生きている。
「ジャン…」
「あいつがオレを…変えたんだ」
「ジャン…変わったのは、ジャンだけじゃない。マルコも…変わったよ」
ジャンは顔を上げる。
「どういう、意味だ?」
「解散式の日ね、言ってたんだ」
――僕、憲兵になったら、もう少し自己主張してみるつもりなんだ。確かに、互いの意見を尊重し合うことは大切なことだけど、相手と争っても、相手を傷つけても、自分の意志を貫かなきゃいけない時もあるんだって、ジャンを見てて思ったから。
ジャンの表情が一瞬固まった。
ガラスが砕け散る直前のように、ひび割れ、歪んでいく。
慌てて顔を背けた。
「わかった。もういい。その話は終いだ」
リアは諭すような口調で続ける。
「マルコがジャンを変えたように、ジャンもマルコを変えたんだよ」
「よせって」
「いいじゃない。マルコを偲んで泣けるのは、今日だけなんだから。私たち、明日から調査兵になるんだよ」
ジャンの肩が震えた。
涙が一筋、頬を伝って落ちていく。
「なんで、あいつなんだ…。なんで、よりによって、あいつが…」
ジャンはリアの肩を掴む。
「あと一日だ!あとたった一日で、何もかも違った!あいつも、オレも、お前も!何でだよ…何でだよ、ちくしょう…」
――ジャンは見かけよりずっといい人だよ。薄情に見えるかもしれないけど、本当は、すごく情に厚いんだ。リアも一人が好きそうに見えて実は寂しがり屋だし、二人はお似合いなんじゃないかな。
バカマルコ。
そばかすばっかり気にしてるから、自分の魅力にも気づけないんだ。
すっごくすっごく好きだったのに。
憲兵団に入って、理想高いあなたが傷つかないように、守っていきたいと思ってたのに。
何もかもが変わってしまった。
今日一日で。
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