AOT短編 | ナノ

友よ…


(2/5)


「いつかマルコが」

ジャンがポツリと呟いた。

「言ってたんだ」

リアはジャンの横顔を見つめる。

彼のブラウンの瞳は、マルコを映しているのだろうか。

「お前はオレのことが好きだから、オレにしっかり守ってほしいって」

ジャンは短く笑った。

「視野が広くて、優秀な奴なのによ、そういうところはバカなんだ」

リアは消え入りそうな笑みを落とす。

「余計なお世話。…ホント、バカ」

ジャンはちらりとリアを見遣る。

「お前、マルコが好きだったもんな」

リアの手先がピクリと震えた。

ジャンは、自分のことしか考えていないように見えて、本当はとてもよく他人を見ているんだ。

「なあ、お前は憲兵団に行けよ。マルコの代わりに、お前が行くんだ」

リアは首を振った。

「私は、調査兵団に行く」

ジャンは眉を寄せる。

「何でだよ」

「もう決めたから」

「は?理由になってねえよ」



リアは空を仰いだ。

月明かりのベールの更に上で、星が無数に瞬いている。

こんな夜でも、空の景色は変わらない。

私の世界はこんなにも変わってしまったのに、私のこの胸の痛みは、空を何一つ変えることはない。

人間はいつだってちっぽけだ。



「マルコってさ、ジャンのこと好きだったよ」

ジャンは面喰った顔をした。

「何だよ突然。あいつは同期の中で嫌いな奴なんかいなかっただろうさ」

「そうじゃなくて。そりゃ、マルコはそういう人だったもん、みんな好きだったと思うよ。でもジャンはまた別」

「んだよ。オレはそういう趣味はねえぜ?」

「それも違う。マルコね、ジャンのこと羨ましいって言ってた」

「羨ましい?あいつが?」

「そう。ジャンは、口は悪いけど、その分真っ直ぐで、自分の主張を飾らないって」

「そりゃ、褒め言葉か?」

「少なくともマルコにとってはね。マルコは、ああいう性格もあって、周りの空気を読んで発言するでしょ?私はマルコの優しさだって思うけど、彼自身はそれが自分の弱さだって思ってたみたい。どんな時にも周りに流されないで自分の意見を言えるジャンが羨ましいって」

「だったら、あの野郎も同じだろ」

「エレン?あなたたちいつも衝突してたもんね。でも、エレンはああ見えて、巨人のこと以外では結構常識人なんだから」

「はあ!?どこがだよ!?」

「ひがまないでよ。いいじゃない。そこがいいって言ってるんだから」

ジャンは口を結んで顔を逸らしてしまった。

「ジャンはさ、ホントに、素直なんだよ。だから、する発言はいつだって本心だし、自分が間違ってるって思ったら素直に直るの。そこがいいとこ」

聞いているのかいないのか、ジャンは鼻を鳴らす。

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