すれ違い、振り返れば
(2/4)
エドに見咎められればまた追い返されてしまう。
ならば影からこっそりと見守ろう。
新たな作戦を立てたナズナは、静かに二人の後をつけた。
二人はどんどん怪しげな路地に入ってゆく。
まっとうな人間が足を踏み入れるとは思えない場所だ。
通りのいたる所に瓦礫が積み上げてある。
何かの原因で一度崩れた壁や道路が、修復されないまま脇に除けられているのかもしれなかった。
少しずつ狭く、薄暗くなってゆく路に、ナズナは恐怖を覚えた。
突然、エドとアルを数人のガタイのいい男たちが取り囲んだ。
ナズナは驚いて身構える。
一方、エドはニヤリと笑みを浮かべた。
余裕の表情だ。
待ってましたと言わんばかりである。
瞬く間に乱闘が始まった。
大男を相手に小柄な体型と錬金術を生かし、エドは大立ち回りを演じる。
アルのアシストも絶妙だ。
ほんの数分で、残るはあと一名になってしまった。
ナズナが心配をする暇さえない。
自棄になった男がエドをめがけて突進してきた。
それを軽々とかわし、相手の背中に蹴りを入れる。
男は瓦礫に頭から突っ込んでそのまま動かなくなってしまった。
あっという間だった。
エドとアルはここまで強かったのかとリサは驚く。
しかし、次の瞬間、ナズナの表情は凍りついた。
その後のことはよく覚えていない。
ただ反射的に、力いっぱい駆け出していた。
一段落つくと、アルは道路に転がった大男たちを道路脇に片づけ始めた。
エドは満足げに腕を組む。
「口ほどにもねぇ奴らだぜ!」
生き生きしたエドの声に、アルは苦笑して振り返る。
「まったく兄さんは…少しやりすぎだよ」
そして、その差し迫った状況に硬直した。
「兄さん!!ナズナ!?」
え?リサ?と視線を巡らそうとしたエドの頭上を大きな影が覆う。
男が突っ込んだ瓦礫が、大きな雪崩を起こしてエドに覆いかぶさった。
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