『も、もう!着いてこないで!』


学校内ではどこでも後ろについてくる暁君。ももちゃんの言うとおりストーカーだ…!


「怒った顔も可愛いね」


『っ、』


昨日の可哀想、は前言撤回。昨日のは見間違い。早く席替えしてほしい…


「**ちゃ〜ん!!!」


いつもの鬱陶しいほど爽やかな笑顔が―




「ぃだっ!!!」


『え?』


「あっ、悪ぃ」


急に甘ったるい声が、痛みを含んだ。後ろを振り向くと、いつのまにやら暁君が転んで倒れていた


「きっ、気を付けてくれ…危ないから」


「おー」


矢田君の足に引っ掛かったみたい、何か典型的だな。矢田くんが今の内に行けと言うように、指をさしてくれて、ようやく暁くんのストーカー行為から逃げられた。






「今日の学活は係決めだ」


クラス内での係を決める時間。今回は何にしようかな?仲良い子と一緒が良いな


「**ちゃん」


『ん、なに?』


「学習・配布係にならない?人数多いから一緒になれるかもしれないし―」


『そうだね、あまり忙しい係じゃないし』


そう、はづきちゃんと約束して学習・配布係決めに―


「でわ次に、学習・配布係!」


『「はーい!!!」』


「あっ、はーい!」


『「えっ」』


わたしたちが手を挙げたのに反応して、何故か暁君も…手を挙げた。

やっぱり話聞こえてたのかな…あ、はづきちゃんが怖い。


「はいはーい!あたしもなりますぅ!」


『あいちゃん…!』


「**、藤原、暁、妹尾…と、矢田か」


矢田君?

横を見るとダルそうに手を挙げていた。あー面倒な係は嫌だからかな?


「この5人で決まりだな」


それから順調に係は決まっていった。どれみちゃんとハナちゃんは学級文庫を管理する読者係、おんぷちゃんとももちゃんはクラスでの集会係になった。







「配布係!職員室に配布物とりにきて!」


『「はーい」』


「**ちゃん行こうか!」


エスコートするように差し出された手を、苦笑いで受け流す。わたしスルースキル上がってるかも。


『矢田君―』


「…おう」


「あの、僕も一緒に」


『はいはい』







「ざっとこれくらいだな」


『先生…多すぎですよ』


目の前には山積みにされた配布物、何百枚あるんだろ


「いやー昨日配り忘れてなー、あと夏休みのイベントとか―」


「ほほー」


「色々あるんですね」


見てみると海の家、山の家など短気研修が―小学生最後の夏だし、皆とどこか行きたいな


「早く運ぼうぜ」


『だね』


5人で分けて持っても、かなりの多さに重さ。よろよろする。


「おっ、重すぎるわ…」


『頑張って、はづきちゃん…!あと少しだから―』


「**ちゃんも相当重そうやで、持ちすぎやないか?」


『だいじょう、ぶ…!』


もうちょっと、もうちょっと。


「そうか…?」


「僕が持とうか?」


そう言ってきた暁君は―


『…汗ダラダラだけど』


「男のくせにダラしないなー」


「だっ、だって…」


暁くんの優しさとダラしなさにクスクス笑っていると


「ん」


矢田君が前に立って、腕を突ついてきた


『?』


「こっち乗せて」


『えっ、でも矢田君だって―』


「良いから」


『うん…』


3分の1を矢田君に持ってもらった。ついでに、はづきちゃんのも。


『大丈夫?』


「大丈夫、男だから」


『…ありがとう』


「やっぱり矢田君の方が頼りになるなぁ」


ニヤリとあいちゃんは暁君に笑いかける


「むっ」






『さっきは本当にありがとうね』


「…別に」


こんなぶっきらぼうな優しさが―




*10.04.11*



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