『最初は仲良くなれないって思っていたけど、素敵な人だよね…レッドくん』


レッド先輩、だけ?

グリーン先輩は…?


「お、俺も…憧れの、人です」


強い人なのに、自慢せず、驕らず、ただひたすらにポケモンを愛している人。俺の憧れ。あんな人、他にいない。


『素っ気無いけど、冷たくはないよね。ピカチュウといるときの優しい笑顔とか…ふふ』


**先輩はレッド先輩の貴重な笑顔を見たことがあるのか。

その表情を思い出しているのか、**先輩も優しい笑顔をヒノアラシへと向ける。

俺はその表情を見て、何故だか…上手く笑えなかった。


「ヒノ〜」


『ん?マッサージ気持ちいいのね。毛並みも綺麗になった』


ねぇ、**先輩。レッド先輩へのその言葉…どういう意味が、ありますか?







『もう暗くなってきた…そろそろ帰るね』


ただ、ぼんやりとヒノアラシと戯れる**先輩を眺めていたら、すっかり外は暗くなっていた。


「は、はい!送ります!」


『大丈夫よ、ゴールドくん疲れてそうだし』


「あ…あの、」


『今日はありがとうね』


「いえ、こちらこそ…補習手伝ってくださって、ありがとうございます」


嫌な先輩たちのことは、もう忘れてくれたかな。少しでも、**先輩を元気づけられたなら、そうなら、嬉しい。


『じゃあね、ヒノアラシ』


「ヒノっ!」


立ち上がった**先輩の足をひしっと掴んで離さないヒノアラシ。


「おい、ヒノアラシ。**先輩はもう帰るんだぞ」


「ヒノ…」


『ヒノアラシ、また会おうね…。あ、今度花火来るよね?』


「…はい」


『その時にまた、ポロック作ってくるね』


「ヒノ!ヒノヒノ!!!」


『うん、楽しみにしててね』


ようやく**先輩から離れたヒノアラシを抱っこして、玄関まで見送る。


「あら、**ちゃん帰っちゃうのね、また来てね〜」


『はい、ありがとうございます。お邪魔しました』


「**先輩…お気をつけて」


「ヒノ〜!」


『うん、またねゴールドくん、ヒノアラシ』


笑顔で去っていく**先輩。

俺、しっかり笑顔で見送れているのかな。


∞2016/07/01

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