『布団、気持ちいい』 カーテンを閉めてベッドに潜る。先生は職員室に行くからと言って部屋を出ていった。 何でこんなに心がグルグルするんだろう。 ここ最近のことは自分の中で綺麗にまとめられない。 『わけ、わかんない…っ』 やっぱり、いつも通り、ここで私は泣いてしまう。 「おい」 『!』 声を圧し殺していたのに、隣のベッドから声をかけられた。ビックリしたと同時に、授業をサボるような1年生、ってことに怖さも感じた。 『ごめん、なさい』 「ん」 涙を拭いて声がしたほうに謝ると、頷くような声がしただけで、特に何か言われることはなかった。 『うるさかった…ですか?』 「いや…泣いてたのか?」 ぎこちなく、年下だけど敬語で聞いてみると、やっぱり私の泣き声は聞こえていたらしい。 『あの、ごめん…なさい』 「また謝ってる」 クスッと面白そうに笑い声が聞こえて、泣いていたことが恥ずかしく感じる。 「何か嫌なことでもあったとか?」 『―…ない、です』 「何もないのに泣くか?」 改めて言われて、何で泣いているのか考えて、また涙が出てきた。 『っ―』 「え、ちょ…」 私がまた泣き声をもらすものだから、カーテンの向こうで男の子はあたふたしているようだ。知らない人にも迷惑かけている。 『ほんと、ごめんない…静かにします、から』 「………話、俺で良かったら聞くけど。どうせ顔見えないんだし」 思いがけない言葉に再び驚く。この子は優しい人なんだ、って思うけれども、初対面の人に自分のグルグルした感情を話しても困らせるだけだ。 『ありがとう、ございます。…でも、大丈夫ですから。もう煩くしませんから―』 「ん、そっか。無理すんなよ…。俺よくこの時間サボってここにいるから。気が向けば話聞いてやるよ」 顔を知らないから、少し警戒心はあるものの、優しい言葉に心が軽くなるのを感じた。年下だけど上から目線な言い方。でも私が2年生なの知らないんだっけ。どういう人か分からないけど、優しい人で、対等な会話ができてることを嬉しく思う。 『ありがとう。気が向けば、私の話を聞いてくださいね。』 「あぁ」 「**さん、起きて。お昼休みよ」 ふと、先生の声がして目が覚めた。いつの間にか寝てしまっていたようだ。起き上がってカーテンを開けると、笑顔の先生。向こう側には誰もいないベッドが見えた。 「ちょっとは落ち着いた?」 『はい。隣のサボり君が声をかけてくれたんです。』 「あら、本当?あの子ってクールな感じで私にもあまり口聞いてくれないのよねー。そんなところも**さんみたい」 『え、そうですか?』 そうよー、と笑って先生が言うもんだから、私たちは似た者同士な気がした。 また会えると良いけどー。 『あ、じゃあ体育館戻ります』 TOPへ戻る |