夜ご飯まで自由時間と言われたけれど、さあ何をしようか。
あまり動きすぎてもお腹が減るいっぽうだし。さっき通った庭園にでもお散歩に行こうか。私に似て運動嫌いのテリアモンのダイエットのためにも。


『―テリアモン、お庭にでも行こうか』


「うん、行く〜」






テリアモンを歩かせようと思ったのに、何故か私の頭の上に上ったまんま。重すぎて首もげそう。しばらく歩くと、洋風の園庭に着いた。バラやアマリリスなど色とりどりな花がふわりと香りを放つ綺麗な場所。


「いい〜か〜おり〜」


『そうだね〜』


「んんん、あっち」


テリアモンが何かに気付いたのか、小さな指を差す方向には、源兄弟がいた。男の子メンバーは「夜ご飯前の運動だー!八神についてこい!」とか叫んで体育館のほうに走って行ったのに。珍しい。


『…こんにちわ』


「こんにちは〜」


「あっ、えーと…**さんにテリアモン、ですよね?」


『おおお!覚えていてくれてありがとね、輝一くん』


「ありがとね〜こ〜いちく〜ん」


「いっ、いえ!」


「………」


礼儀正しく笑顔が眩しい輝一くん…とは、打って変わって、ぶっきらぼうな弟の輝二くん。こちらをちらっと見てから、腕を組んで立ち上がった。


『花キレイだね』


「そうですね、香りがとても良くて癒されます」


ようやく私の頭の上から降り立ったテリアモンは、花の匂いを嗅いだと思ったら蜜を美味しそうに舐めている。


『テリアモン、お腹壊しても知らないからねー』


「あはは、パートナーデジモンって良いですね」


『そう?大変よ〜お菓子は食い散らかすわ、すぐ抱っこをねだってくるわ、ああ言えばこう言うし、テレビのチャンネル権は取られるし!!!』


「仲良いんですね」


『そ、かな〜………まあ、いないと、寂しい…かも』


「こ〜いち、どうぞ〜」


「わあ、僕にくれるの?」


『あ、テリアモン、ダメでしょ!』


「大丈夫ですよ。テリアモン、ありがとう」


テリアモンが差し出した花に口をつけて「甘いね」とテリアモンに笑いかける輝一くん。どこか賢ちゃんに似ている雰囲気が微笑ましかった。


「あっ、そうだ。まだ部屋の片づけ終わりきってなかった。輝二、先に戻るから。**さんとテリアモンもまた後で―」


『うん、また後でね』


「ばいば〜い」


走っていく輝一くんの後ろ姿を見送っていると、あ、こけた。なんだ…ただの萌えるドジっ子か。見てて飽きないかんじの子だな。

そういえば。輝一くんがいなくなって、輝ニくんと二人きりになってしまった…。再び花の蜜を吸い始めたテリアモンは、気まずい空気に気づかない。


『………』


「………」


やばい、何この痛い沈黙…輝二くんは腕を組んで花を見て、こちらに一瞥もくれない。何で輝一くんと一緒に戻らなかったんだろう。そんなにこの花が好きなのか。

何か話題を―


『そういえば、輝二くんたちって…―』


言い掛けた瞬間、何故か睨まれた。


『すっ、すみません』


「…何で謝るのさ」


『いや、睨まれた…感が』


「あっそ」


何か…会話が続かない。これって私が悪いのか?年上として空気読んで帰ったほうがいいのかな。


「………花、好きなのか?」


『へっ?!まぁ…花言葉とか、調べるのは好き…だけど』


「へー、じゃあバラは?」


おっ、良い感じじゃない?!!


『愛と、恋!!!』


「…まぁ、当たってるな」


『当たってるな…って、輝二くんも花言葉知っているの?』


「うっ」


え、一緒ギクッとしたと思ったら顔が赤くなっている。照れて、るの?


『えーっと…うん、良いと思うよ、花が好きな男の子』


「…お前に言われてもな」


『うぅっ、傷ついた…!!!』


なーんて。冗談だけど。


「っ、………ごめん」


『え』


「なっ、何も無い」


ふざけたつもりが…謝られた。何だ、この子も流行りのツンデレか。やっぱり、ツンデレは国宝に以下略。


ちょっとよく分からない子だけど、意外と素直で仲良く…なれそう。


<ピンポンパンポーン!夜ご飯の用意が出来ましたゲコ、食堂までお集まりくださいゲコ〜ゲコゲコ〜>


『おっ、意外と早い。テリアモーン!ごはーん!!!』


「**〜ベトベト〜」


『うわ!もう、どんだけ蜜舐めたのよ』


テリアモンの口のまわりは蜜でベトベト。何輪の花が被害にあったのやら…ポケットからハンカチを取り出し拭いていく。


「む〜」


『後で水洗いね、さ!ごはんごはん!輝二くんも急いで行くよ!!!』


「…おう」







『わ、みんな早いね』


「早い早い〜」


『テリアモンが自分で歩けばもっと早く着いたのにな〜』


「ハンバーグどこ〜」


『無視ですか…』


食堂についたら、すでにみんなが揃っていた。食堂と言っていたのでテーブルやイスがあるバイキング形式かと思えば、広間座敷のようで一人一人にご飯が用意されていた。


「**さーん!!!」


『あ、ヒカリちゃん』


「解散したあと探したのに全然見つからなかったんですよ」


『そうなの、ごめんね』


「いえ、**さんは悪くないんですよ、悪いのは―」


「なっ、何だよ…」


後ろでそっぽを向いてた輝二くんに気付いたらしく、再び謎の睨み合い。


「そっちこそ何よ、私の**さんに!2人っきりでどこに行ってたのよ!」


二人のバチバチに気づいたのか、輝一くんが駆け寄ってきて、


「あ、それはね、僕たちが―」


片割れは黙れ


「はっ、はぃー…」


弁明しようとしたら、ヒカリちゃんのドス声で止められた。ほんとは良い子なんだけどね、私のこと慕ってくれすぎてて…あ、輝一くん涙目。


「別に、どこにも」


言いたくないのか答えが曖昧。やっぱ男の子がお花畑って恥ずかしいのかな。


『たまたま、そこで一緒になっただけだよ、ね!』


「…ふん」


「キィー!!!ムカつく、また敵が増えたわ!!!」


『ヒカリちゃん、おさえておさえて』


「いやーん、全然ムカついてなんかいませんよ〜」


『あはは…』


「………」


『…さささ、ご飯食べよ!!!』


「はい!」


用意された晩ご飯は洋食のようだ。


「わ〜い、ぼくの好きなハンバーグだ〜♪」


『良かったね』


「さ〜さ〜、席に座るんじゃ」


座布団に座ればテリアモンは、私の膝に座ってきた。パートナーデジモンにも同じ料理が用意され、デジタルワールドでは食べられない食事にみんなが目を輝かせていた。私の左隣にはヒカリちゃん、えーっと、右隣は…いいいい伊織が座ってくれた!!!


『ふふふ〜』


「なっ、何ですかその気持ち悪い笑い方は」


「ちょっと、伊織くん、**さんのどこが気持ち悪いの、詳しく述べられるもんなら述べてみなさい」


「っ、別にどこがってわけじゃなく、て…」


『二人とも仲良く…ね、伊織が自ら私の近くにくるって珍しいじゃない、嬉しくて…つい』


「まぁ…そうよね、**さんの愛は広い心で受け止めるべきよ、分かった?伊織くん」


「…はい。でも今回はたまたまですよ、たまたま座ったところが**さんの隣だっただけです」


『へぇ〜』


「へぇ〜」


「へぇー?」


「アルマジモン、真似しない!」


「ごめんだぎゃー」







「ふ〜食った食った〜♪」


『テリアモンおじさんみたい、また重くなったわ…』


「テイルモンも美味しかった?」


「ああ、とても美味しかった」


「あとは風呂だけじゃな。消灯時間は12時、それまでに入っておくように………一応言っておくが、もちろんのこと男女別じゃからな」


そりゃあそうですよ。混浴なんてありえません。

でも、


『テリアモンとはお風呂入れないね』


「え〜、やだ〜いつも一緒なのに」


「「「(ななななんだと?!)」」」


『しょうがないでしょ、別にテリアモンだけで入るわけじゃないんだから。みんな一緒だからきっと楽しいよ』


「む〜…頑張る」


『はいはい、良い子良い子』






女の子チームでお風呂に向かう途中、誰かにテリアモンを預けなきゃな〜。この子を任せられるのは―


『あっ、光子郎くん!』


「**さん、何ですか?」


『テリアモン一緒にお風呂つれていってくれない?』


「ついでにホークモンもお願いね〜!」


「えっ、あ…はい」


半ば無理やり、京ちゃんと一緒にパートナーを預けた。光子郎くんならしっかりしているし、大丈夫かな〜と。


『テリアモン、光子郎くんに迷惑かけちゃ駄目だからね』


「は〜い」


『タオル忘れないようにね』


「えっと、も…も〜まんたい」


『ん?何それ』


「ジェンのテリアモンに教えてもらったの〜問題無いで〜す!って意味」


『ほうほう、もーまんたい、ね。じゃあお風呂上がったら、そこのベンチで待っててね』


「もーまんたい、バイバ〜イ」



∞09.11.14

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