「ねぇ、ウィザーモン」 「好きよ」 「人間とデジモンの恋って、素敵じゃない?」 「それでも、ずっと一緒にいたいな」 「そう思わない?」 「**ちゃん…」 「すんまへん…わてのせいで、**さんを置いてけぼりに―」 「テントモンのせいじゃない、体力が戻ったらすぐに戻って**を探しに行こう」 どこにいるかも分からない**ちゃんを…どうやって探すんだ。あの時、手を早く握っていれば、すぐにファントモンを追いかけていれば、**ちゃんは一人にはならなかったのに。 「とりあえず、太一さんたちに連絡をしておきましょう。」 やっぱり、こういうときに真っ先に名前が出るのが太一さん。太一さんは頼りがいのある、僕らのリーダーだから。 それに、**ちゃんのこと…だから。一番心配しそうだ。 「………」 「タケル、大丈夫か…?」 「うん…大丈夫、早く**ちゃんを探しにいこう」 「あぁ」 「なに?」 「僕も好きだよ」 「人間とデジモンの恋は難しいよ」 「ずっと…?」 「そうだね、僕も君とずっと一緒にいたい」 「光子郎!**は?!」 ほら、すぐに来た。 「いえ、これからみんなでまたこの空間に入って探そうと―」 「そうか…なら早く行こうぜ」 滅多に見ない、太一さんの焦った表情。こんな顔をするのは、**ちゃんが危ないからだ。 **ちゃんと太一さんは似てる。 みんなを引っ張る力がある。勇気づける、元気づける、そんな力を持った二人がいたからこそ、あの日の冒険は進んでいけた。 幼いながらも**ちゃんは太一さんが好きで、太一さんも**ちゃんが好きだった。 あの日の冒険が終わってからは、なかなか会う機会が減った。僕がお台場小に転校したころから、再びみんなで顔を合わせるようになって…それで気づいたことがある―二人の距離はもう離れていた。 「何もかも上手くいかないの」 「頑張れって…言わないで!」 「話したくないの…もう」 「側に来ないで…やめて、もう嫌なの」 **ちゃんは太一さんがずっと好きだった。でも太一さんは空さんに好意を寄せていた。たぶん、本人はあのクリスマスの日に気づいたんだと思う。**ちゃんを好きな気持ちと、空さんを好きな気持ちは別物だってことを― 空さんは僕の兄さんと付き合うようになった。みんなで集まったときに、仲良く話す空さんと兄さんを見つめる太一さん、その太一さんを見つめる**ちゃん。この光景を何度も見てきた。 一方通行の思いは届かない、そう諦めたのか、**ちゃんは太一さんを見つめることは無くなった。普通に接して、笑いあう。 僕は嬉しかった。**ちゃんはもうツラくなるのを辞めたんだと。そんな**ちゃんを見てきた僕は**ちゃんを好きになった。むしろ、ずっと僕は**ちゃんが好きだった。**ちゃんが太一さんを諦めるのを心待ちにしていたのかもしれない。酷い感情だ。 ある日、僕は**ちゃんに好きだと告白した。あっさりと受け入れられ、僕は嬉しかった。**ちゃんは僕を選んでくれた。他の誰でもなく、太一さんでもなく、僕を。 つまらない日があっても、**ちゃんと居られるということで幸せを感じた。そんな僕にとって**ちゃんは大事な、大切な人だ。 「大丈夫だよ…頑張って、ね」 「ごめん、でもー」 「どうして…」 「だって…ずっと一緒に、いようって」 たまに**ちゃんへと視線を向ける太一さんには気づいていた。でも、付き合ってからは気づかないふりをした。 ∞2015/09/03 TOPへ戻る |