ファントモンのマントに覆われて、一瞬の浮遊感を感じた、と思ったらドスンと尻餅をついた。


『いった…何て乱暴な』


「えっ」


『えっ?』


声がした方を見ると、さっき見た松田啓人…くん?が、お着替えを始めようとしているところで―


「っ。わぁあああ!!!」


『きゃぁあああ!!!』


まさかの降り立ったのはお着替え中のタカトくんの部屋だった。悪意あるだろ、これは…。


「ふぇ?テリアモン?」


「ん?」


「え、テリアモン?」


『うわ、でっかいデジモン!』


お互いがお互いを見つめあい、頭にクエスチョンマークを浮かべている。と、とりあえず…その場に正座して両手で目を隠す。


『あの…詳しくお話したいんですけど、その…服をですね―』


「ふ、く…うわぁああパンツ!!!」






「し、失礼しました…」


『こちらこそ、痴漢じゃないです、すみません』


「ねぇねぇ、テリアモン?テリアモンはジェンのテリアモン?」


「ん?ぼくは**のテリアモンだよ?」


「**?のテリアモン?ふぇ???」


『えっと…どこから説明すればいいのやら…あ、私は****です』


「松田啓人、です…こっちはギルモン」


「よろしくー」


「テリアモンで〜す」


「あの、**さんはテイマー…ですよね」


『テイマー?』


「テリアモンって、パートナーデジモンですよね?」


『うん………あ、ここではデジモンを連れている人をテイマーっていうの?』


「はい。僕以外にもテイマーはたくさんいて―」


『そうそう!李くんと牧野ちゃん!!!』


「え、二人を知っているんですか?」


『あーそうだった、えっと、何ていうか、ここはリアルワールドよね?で、デジタルワールドもあるよね?』


「あるよー」


『実は、私は、別のリアルワールドからきたの』





「………………う、宇宙人?!!」


『違う!!!』


何だろう、この子…純粋通り越してバカっぽい。


「お泊り会しよ〜って、お誘いで〜す」


「わぁ、タカト、お泊り会だって!ギルモン行きたいなー」


「まままままさか宇宙船に連れていかれて人体実験なんて…―」


『ないないない!ないから!命は保障します!』


「タカト〜」


「まぁ…**さん、悪い人には見えない…けど」


困った顔をしているけれど、どこかソワソワしてて、興味持ってくれているのは確か。


『私は宇宙人じゃなく、純粋な高校2年生です。ねぇ、せっかくだから行こうよ、夏休みでしょ?』


「じゃ、じゃあ、ジェンとルキが行くなら…行きます」


『やった!じゃあさっそくその二人を誘いに行こう、あ、お泊り会の準備するよね?部屋出てるから、すばやく準備お願いしますね!じゃっ!!!』


「え、あ、はい………」






「**ノリノリだね〜」


『いや〜何か楽しくなってきちゃった。ギルモン初めて見たし、他のデジモンにも会ってみたいな』


「あのぉ…準備終わりました」


『おお!じゃあレッツゴー!!!』


リュックを背負ったタカトくんを引っ張って階段を降りると良い匂いがしてきた。


「あら、タカト、いつの間にお客さんが?」


『あ、こんにちは…!』


「僕の家、松田ベーカリーっていうパン屋なんです」


『どうりで、この良い匂い…お腹空いたわ』


「母さん、ギルモンやジェンたちとお泊り会行っていい…?」


「んーもちろんよ、夏休みなんだし。でも迷惑かけないようにね。あ、このパン持っていきなさい」


「そちらのタカトのお友達も好きなのもっていっていいぞ」


『え、良いんですか!ありがとうございます〜』


焼きたてホカホカのあんぱんとクロワッサンとメロンパンとカレーパン、たくさん貰ってしまった。タカトくんの両親にお礼を行ってパンを食べながら出発。


『なんだこれ!美味しすぎる…!!!松田ベーカリー近所に欲しいな〜毎日通いた〜い!!!』


「えへへ、そう言ってくれると嬉しいです」





しばらく歩くと、マンションに着いた。

タカトくんの案内で階段を登っていくと、短い足で登るのが疲れたのか、テリアモンが背中にのしかかってきた。あなた自分がいったい何キロ体重あると思っているんだ…。
ゼーゼーになりながら階段を登りきり、ある部屋のインターホンを押すと可愛らしい声が聞こえてきて、ドアを開けたのはピンクの中華風な服を着た女の子。


「こんにちは、小春ちゃん。ジェンお兄ちゃん、いるー?」


「いるよー、ジェンにいちゃーん!」


パタパタと部屋に戻っていき、再びドアを開けたのは、目的の少年。


「タカト、どうしたの?…こちらの方は?」


『初めまして、り、じゅぇんりゃ、くん、****です』


「あはは、フルネームだと言いにくいんで、ジェンで良いですよ、**さん」


そう笑って握手をしてくれる、眩しい、ピュアオーラが眩しい。うちのメンバーにはいないタイプだな…あ、賢ちゃんがいるか。


「それで、何か用があって?」


「何故かこちらの**さんがお泊り会しよう、って」


「???」


ですよねー!困りますよね、初対面の女がお泊り会しませんか?って危険な香りしかいないよねー!分かってるけど、ある意味これが仕事っていうか!!!何ていうか!!!


「…面白そうだね」


『お、おも?!』


「**さんテイマーですよね?」


『はい…』


ちょっと待っててください、と部屋に戻ったジェンくんが抱えてきたのは、見覚えのある…クッション。


『それ…―』


「僕の大好きなクッションです」


『分かる!そのクッション凄いんだよね!もっちりむちむちしてて、抱き枕にもできるし、程よい低反発で、っていうか、低反抗?だし―』


「**がよだれ垂らして寝るから迷惑してるクッションって僕のこと〜?」


「ジェンの足癖悪いから迷惑してるクッションってぼくのことでしょー?」


『やっぱりテリアモンだ!って、うちのテリアモンうるさいよ!!!』


そういえばさっきタカトくんの家でギルモンがテリアモンについて話していたっけ。


「僕と**さんのパートナーデジモン同じですね、ほんと生意気で困っちゃいます」


「んー、気持ちよく寝てたのにージェンのバカー」


そう言って眠り目をこすりながら床に降り立ったジェンくんのテリアモンはうちのテリアモンと見つめあう。


「わぁ〜テリアモンだ〜」


「おぉーテリアモンだー」


『何この、癒される感じ…』


「ものすっっっごく可愛い…」


「そりゃあテリアモンだからね」


ペタペタとお互いを触ったり、にらめっこしたり。


『かわいい………っじゃなくて、ジェンくんもOKってことで良い、のかな?』


「もちろんですよ。こんな素敵な人と知り合えて嬉しいですし、もっと**さんのこと知りたいですし…さっそく準備してきますね、少しだけ待っててください」


『は、はい…』


す、素敵な人?わたしが?さささささいきんの、中学生って、マセてる…わ。ちょっとドキッとしてしまった。






「あんたらには危機感ってものがないの?」


最後の目的の女の子、牧野留姫…さん。自己紹介のさいに「ちゃん」付けで名前を呼んだらグーで殴られました、絶賛左頬が痛いです。


「ルキ〜一緒に行こうよ」


いつの間にやら、タカトくんはお泊り会に行く気満々でルキさんを説得してくれている。なんだか、女の勘からすると、これ…ちょっと好きっぽい?どっちがどっちか分からないけれど。


「こんな怪しい女についていくなんて嫌よ」


『えー…そんなに私怪しいかな…』


「気にしないでください**さん。ルキは照れてるだけですから」


「ちょっと誰が照れるのよ!!!」


「ほんとは行きたいけど、知らない人がいるから照れて、言いづらいんですよ」


『あー…いわゆるツンデレちゃ、ツンデレさんかぁ〜』


「もう一発殴られたいわけ?」


『まさかルキさん、滅相もございません』


「ルキ、せっかくの夏休みだろ?最近タカトたちに会えなくて寂しそうにしてたじゃないか」


「え、ルキほんとう?!!」


「うううううるさいレナモン!!!」


音もなく木陰から現れた、ルキさんのパートナーデジモンであろうレナモンさん。狐だろうか、どこか和風な雰囲気に見惚れてしまう。


『あのー…ルキさん、ぜひ…』


「その、さんっての辞めて。呼び捨てでいい」


『ルキ!!!ルキって呼んでいいの?!!』


「な、なに喜んでるの…」


『あ、いや、ちょっと心開いてくれたような?気がして』


「開いてないし」


「では支度をしてくる」


「ちょっとレナモン!もう!仕方なく、行くんだからね!そこの女が変なことしたら、ぶん殴るから!!!」


『おっけーで〜す』


まあ、何かあったら殴られるのは私じゃなくてゲンナイさんだから、どうでも良いんだけどね。




『ファントモン、これで全員だから、元の場所に戻して』


<りょーかいで〜す>



∞09.02.06



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