「大輔くん」 「あ、光子郎さん」 休み時間、珍しく俺の教室に来た光子郎さん。タケルでも、**ちゃんでもなく、俺を呼びに来るのは何事だろうか。 「どうしたんすか?」 「あの…タケルくんから、聞きましたか?」 「何をですか?」 「大輔くんは知らないのか…」 何かを考えるような素振りを見せる光子郎さんに、パッと頭に浮かんだ事を聞いてみた。 「太一さんと、**ちゃんのこと…すか?」 「…知って、いたんですね」 「あ、えと…**ちゃんから相談されたんでー」 眉間に皺を寄せる光子郎さんに、**ちゃんとのやり取りを、しっかりと伝えた。タケルと**ちゃんが両思いだったことは知っている。知っているうえで、今の**ちゃんの思いを尊重したいと思って、俺なりにアドバイスした、と。 「そ…ですか。最終的に決めたのは、**さんですものね」 「太一さんなら、と…思って」 「…この事は、太一さんと**さんのことは、他のみんなには黙っておきましょう」 「え、そりゃ、タケルのことは気がかりだけど…」 「正直、僕は太一さんのことが信じられません」 「えっ、」 「**さんが太一さんを好きなのは本当でも、太一さんが**さんを…本当に好きかは、疑わしいんですよ」 「そ、れは…」 「タケルくんとのことを知っておきながら…告白すると思いますか?タケルくんを傷つけるのは当然。タケルくんとの記憶が戻った**さんを傷つけるのも分かってるはずなのに…好きな人が傷つくのが分かっていて、告白しますか?」 確かに、言われてみれば おかしい。 俺はよく考えずに、**ちゃんに…― 「だから、太一さんと**さんのことが広まって…いざという時に、傷が浅くすむように…」 「はい…」 「他に知っていそうなのは?」 「**ちゃんの友達の織本泉ちゃんが」 「では、その織本さんにも口止めをお願いします」 「分かりました…」 「僕は京さんとあのエリアの解析に努めます。**さんと…タケルくん、任せます」 光子郎さんを見送り、隣の教室のタケルを探すと、ベランダから空を見上げるその背中が見えた。 何と声をかければいいのか。そもそも、俺が声をかけていいのか。 「**ちゃん、は…」 **ちゃんを探すと、案の定、泉ちゃんとこそこそ話していた。たぶん、太一さんとのことだろう。 もうチャイムが鳴る。次の休み時間、話そう。 ∞2016/06/25 TOPへ戻る |