『何か頭が痛いような〜痛くないような〜』


「**大丈夫か?」


『え、は、…はい』


「早く家に帰って、ゆっくり休んでください」


「俺が送っていこうか?」


『いいいいえ、大丈夫です、ちゃんと歩けますし!!!』


「あ…タケルのほうがいいか」


「え、」


『え、どうしてタケルくんですか?』


「だって、お前たち―」


「太一、たぶんそのことも…忘れてる」


「そ、っか…」


「………」


『?』


「**ちゃんはあたしが送っていくわ、今日は部活無いし」


「分かった、頼んだぞ」


「…お願いします」


「えぇ、任せて」


空さんに付き添われてパソコン室を出ていく**ちゃんの後ろ姿を見送った。

いつもは二人で帰る。一緒に手を繋いで校門を出て、分かれ道に着いたら立ち止まって、青空が赤く染まるまで話をした。


「大輔とヒカリにこのこと言っておくな」


「あ、じゃあ私はミミさんと賢くんに…」


「では、丈先輩と伊織くんには僕が報告しておきます」


みんながこのことを知ったからといって、どうかなるわけでもないのに。


「いったい、何でだろうな…」


「あのエリアが関係していることは確実です。でも原因が…倒れていたテントモンは何ともなく、ファントモンによって一時的に行方不明になった**さんだけ記憶を無くすとは―」


「要はファントモンを捕まえなきゃ、ってことか?」


「でも、あそこは時間がたつにつれて風が強くなってるみたいでしたよね?」


「はい…再び行っても、京さんの言う通り、荒れた天候によっては身動きが取れません。ファントモンも何故あのエリアで飛び回っているのか、今すぐには全ての原因は分かりませんね」


「とりあえず、問題のエリアは光子郎と京ちゃんで調べてもらえるか?」


「はい」


「もっちろんですよ!」


「エリアの正体が分かれば**をもう一度連れていけて原因が分かるし、自然と**の記憶が戻れば一番の問題はなくなる、ってことだな」


「タケル、明日は学校が休みだから、行けるやつら集めて**に会いに行こう」


「でも…」


一から、僕たちは出会ったころから始めるのだろうか。もうあの日の冒険から何年経つ?数年分の思い出を共有していたから、僕たちは思いが通じ合ったのに。


「いろいろ話せば思い出すかもしれないだろ?写真だってあるし」


「…分かった」


僕だけ**ちゃんを覚えている。**ちゃんは覚えていない。**ちゃんは僕を知らない。**ちゃんは僕を好きだったことも覚えてない。そもそも…忘れてしまうくらい、僕のことなんて…好きじゃなかったのかもしれない。


胸が軋むように痛い。


∞2015/09/19

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