「タカトのバカ!」 「だから、ゴメンってば〜」 「ケンカは良いから早く席につけ、説明始めるぞ」 説明会に遅れてきた留姫とタカトくんとジェンくん。 「ったく…タカトがモタモタするから」 『留姫落ち着いて…』 わざわざタカトくんのこと待ってあげてたんだ…やっぱり留姫 優しい。 「ねえねえ、あの人ってさ…八神くんよね?」 ふと、少し遠くに座る八神くんに気がついた泉ちゃん。もちろん一緒に座っているのは石田くんに武之内さん。 『あ…うん。合宿行くんだって』 「キャー!それって、それって、チャンスじゃない?」 「そうそう、告白するチャンスだと思う」 『んー、どうかな』 ただ何とも言えずに、苦笑いするしかなかった。 「勉強道具だけは!忘れるなよー特に八神!」 「うっ、大丈夫っすよ…たぶん」 「たぶんじゃねーだろ!ったく、まあ先生も引率頑張るから、お前らも気を引き閉めて来いよ!じゃ、また合宿でなー、解散!気を付けて帰れー」 勉強道具に着替えや必需品、結構…荷物多くなりそうだな。 「近くに川もあるなら結構涼しそうね」 「ねえねえ、合宿に納豆でるかな?」 「出る…んじゃない?食事出るらしいし」 「そっかあ〜よかった〜!あ、お菓子は持って行っていいのよね?」 「変なもの以外ね」 「もう留姫、何よ〜変なものって!」 泉ちゃんもミミちゃんも楽しそうだな…うん、私も楽しもう。 「**さん」 『あ、ジェンくん』 ジェンくんに連れられて、留姫たちとは少し離れたところで資料を見るフリをしながら話す。 「この前の話、覚えてる?」 『タカトくんに…告白させよう、って話?』 「そうそう。タカトに言ってみたんだよ、合宿はルキに告白するチャンスだって」 『うんうん』 「そしたらさ、頑張ってみるって」 『え、ほんと?!あの…タカトくんが?』 「すごいよね。まあ、ずーっとルキのこと好きだったから、タカトもこれが良いキッカケになるって分かったんだろうね」 『そうだね…何がなんでも私たちで2人をくっつけなきゃだね』 「恋のキューピッド作戦!」 『わぁ…ジェンくんヤル気満々だね』 「そりゃあ。大好きな親友2人が幸せにいてくれるなら、ね」 一瞬で顔が浮かんだ。 『留姫のこと好きなの?』 「え?」 『あ、いや…ごめんね。忘れてー』 ジェンくんを八神くんと重ねてしまった 「ルキのことが好きだって?そりゃあ大好きだよ。でも、友達としてね」 『そ、だよね…』 「ルキは初めて会ったときから強気でボーイッシュで、あんまり女の子として意識したことないな。あ、いまのルキに怒られちゃうかな」 ジェンくんが留姫を好きっていうことが、恋愛の意味ではないことを知っている。 分かっているけど、もしも…ジェンくんが八神くんと同じように…思ってしまったら。 どうするんだろう 「ほら僕たち男2人に女1人の幼馴染だし。今までも周りから、そういう恋愛?みたいな聞かれ方したけどさ、僕は2人を大切な親友だと思ってるし、2人が幸せなら僕も幸せなんだ」 八神くんもこういう思いなのだろうか 「タカトがルキのことを好きなのは、当の本人のタカトよりも先に気づいてたと思うんだ。もしも、僕がルキをタカトより先に好きになっていても、うーん…親友のために身を引いたと思うな」 『どんなに、好きでも?』 「うん、どんなに好きでも。そのまま3人で仲良くすごせるなら、僕はあきらめるな」 私には幼馴染がいないし、好きという感情も今までよく分からなかった。 八神くんに出会って、いろいろあって、本当に…本当に好きなんだと自覚して、ようやく好きという感情が分かった。 もし私が八神くんのような立場になったら、どう思うんだろう…そう考えたことはある。確かに、3人で仲良くすごせるなら身をひくことを選ぶと思う。 でも、実際に今、私がいる場所は、その3人の外側。どうしたって部外者で…。 泉ちゃんたちに「告白」と言われても、叶わないのは目に見えている。それでもこの気持ちを伝えたいかは、まだ分からない。もしも気まずい関係になってしまったら…このまま友達でいて、片思いが消えるのを待つのが、自分を守る方法だと、思う。 ∞15/03/05 TOPへ戻る |