宵風と喧嘩をした
本当に些細な言い合い

でも宵風と距離をとっている
この時間がとても寂しい

いつか消えるから…
というわけではない
いつまでも一緒にいたいから


「**、じゃあ行ってくるな」


『うーん…』


夜の12時を回り
また新しい1日がはじまる
今日は雪見さん1人の
情報収集の任務


「まぁ、宵風と2人は気まずいかもしれないが」


『…もう寝てるけどね』


「土産買ってくるから頑張れ、昼までには戻ってくるな」


『はーい、いってらっしゃい』


手を振り家を出ていく

宵風は電気を消した
暗いリビングで
小さな寝息をたてている

近寄って座ってみる


『よ…いて、寝てる?』


返事は返ってこない

寝息はたてているが
心配になって
頬に触れてみる

とても冷たかった
その冷たさがとても悲しかった

毛布をかけて温かくする
頭を撫でてみる


『この体温の差は何を意味してるんだろうね…』


私の触れた手と声に気付いたのか
ゆっくりと目を開いて
眠たそうに聞いてきた


「…なに?」


『あっ…ごめん』


いつもより素っ気ない問いかけ
心に針を刺されたようだ

怒ってるよね、謝らなきゃ


『宵風、ごめんね』


「何で?」


『えっ、何となく…かな』


さっきの喧嘩のこと
忘れちゃったのかな?


「…どうしたの?」


急に涙が出てきた
悲しいのか嬉しいのか
いつも涙の理由は曖昧だ


「泣かないで」


そう言って宵風は
起き上がって私の頭を
優しく撫でてくれた


『うん、ありがと…ありがとう』


深い闇の中
薄っすらと雲の切れ間から
月明かりが照らす

でもすぐに雲に覆われて暗くなる
人の一生は星にしてみれば
ほんの一瞬なんだ

でもその一瞬は人からすれば
生まれて、学んで、働いて
愛する人ができて、家族ができて
―死んでいく
とても長いことなんだ

宵風はその一瞬よりも儚い


『宵風と離れるのは嫌だ』


そう言って抱きつく
宵風もぎゅっと返してくれる


「僕も**と離れるのは嫌だよ」


涙は止まった
悲しみは止まらない
とてもとても切ない


「**…温かい」


私の体温は宵風に
伝わっているんだ

少し離れて私からキスをしてみる

離れようとしたら
頭に手を添えられて
もっと深く深く温かさを感じる

息が途切れそうだ
このまま死んでしまうなら
それは良いことだと思う
悲しさも和らぐだろう

でもまた世界は戻ってきた
酸素を大きく吸い込んだ

私と宵風は触れるだけでは
体温は伝わらないと思う

深く相手を感じなければいけない

生きてる証を確かめよう
まだ夜明けは遠いんだ


「愛してる」


全てが深い闇に溶ける


 2 人 の 体 温


(ただいまー、お前ら仲直りしたのか?)
(うん!)
(ゆきみ…お土産は?)


+09.09.14


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