『ねぇ、俄雨』


「なんですか?」


資料を整理していた俄雨が
一旦手を止める


『もしも過去をやり直せるとしたら、俄雨はどうする?』


「んー……実際戻ってみないと分かりませんね」


少し寂しそうに笑う俄雨
やっぱりね


『…そう』


「**さんは?」


『わたし?』


「はい」


『私はね、俄雨を助けたい』


「…そうですか、嬉しいです」


俄雨をどう助けたいか
それを本人は聞かない

多分、分かっているのだろう


『巻き込む必要なんて無かったんだもの』


「…僕自身の意志です」


『泣く必要も、斬られる…―』


涙がこみあげてくる
なにが悲しいのか

表の世から隠の世にくる人は
たくさんいる…私もそうだ


「………」


心が空っぽになって
生きるのが辛いだけだった

それを埋めてくれたのが隠の世
命の有効利用とでも言うべきか

それが悲しい?
自分の命が今更惜しくなった?

それとも―
俄雨が大切になったから?


「泣いちゃダメです」


『大丈夫、役目は果たすから』


「…傷つかないでください」


『どうして…?』


「悲しい…からです」


『わたしも』


「**さんが大切」


『俄雨が……好き』


今更惜しくなった命
君の傷は私の傷
痛くて、悲しくて、寂しい


時 が 戻 っ た ら

(幸せにいたい)
(あなたと一緒に)



+09.12.13+






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