「なれそめ」










――ガラッ







ク「なんだ遊星、帰ってなかったのか?」


遊「クロウ?お前こそ帰ってなかったのか?」


ク「職員室に、バイト許可書出しに行ってたんだよ」


遊「そういえば、バイト決まったんだってな。頑張れよ」


ク「言われなくても頑張るって。遊星は何で残ってんだ?」


遊「鬼柳の代わりに、日誌書いてたんだ」


ク「はぁ?鬼柳はどうしたんだよ?」


遊「今日は大事な用があるらしい。病院を予約してたらしいから」


ク「病院?ついに脳外科医に行ったのか?あれ、精神科だっけ?」


遊「……健康診断な」


ク「そうだった、そうだった」


遊「本当、鬼柳には厳しいな」


ク「違う違う、『鬼柳には』じゃなくて『鬼柳とジャックには』な」


遊「人数増えてどうするんだ」


ク「そう言ってるけど、お前も顔笑ってるぜ?」


遊「……鬼柳とジャックに怒られるな」


ク「黙っときゃバレねぇって」


遊「それもそうだな」


ク「早く日誌書いちまえよ、帰れねぇぞ?」


遊「それもそうだが…今日は両親も帰ってこないからな。遅くなっても支障はない」


ク「なんだ、学会か何かあんのか?」


遊「あぁ、離れた所にある大学で、研究会があるらしくて」


ク「お前のとこの親も大変だなー」


遊「仕方ないさ、今の時代仕事があるだけでも十分だ」


ク「まあ、そうなんだけどよ。じゃあ、明日の昼間までは一人なのか?」


遊「そうなるな」


ク「ふーん、じゃあさ俺の家泊れよ。一人よりも二人の方が寂しくねぇだろ?」


遊「いや、さすがにそれは…突然押し掛けるのはな…」


ク「何言ってんだよ、俺一人暮らしだろ?住人の俺が良いって言ってんだから」


遊「本当に良いのか?」


ク「だからそう言ってるじゃねぇか。ただし、交換条件として夕飯任せた」


遊「夕飯ぐらい作ってやるさ」


ク「そうと決まったら、さっさと書いちまえよ!早く帰ろうぜ!」


遊「後はここを書けば終わりだから、待っててくれ」




++++++++++++++++++++










遊「夕飯、何が良い?」


ク「何でも良いぜー、冷蔵庫に入ってるもん自由に使えよ」


遊「じゃあ…あまり手間の掛からなくて、多く作れるものを…」


ク「その間にテーブル拭いてる」


遊「あぁ。…クロウ、エプロンあるか?」


ク「エプロン?確かここに……、あったあった。ほら」


遊「使わせて貰うぞ」


ク「どうぞどうぞー」
















遊「クロウ、皿出してくれないか?」


ク「ん?あぁ…どのぐらいの大きさのやつ使いそうだ?」


遊「中ぐらいので十分だと思う」


ク「んじゃ、これで良いや。テーブルに置いとくぞ」


遊「あぁ、有難う」


ク「(うーん、俺のエプロン身につけて、俺の家の台所で夕飯作るって…何か変な感じだな)」















遊「味はどうだ?」


ク「文句なし」


遊「それなら良かった。途中、調味料を入れ間違えたんだが」


ク「え、全然分かんねぇ…」


遊「必死になって誤魔化したからな」


ク「すげぇな…言われなきゃ気付かないって。遊星でもミスするんだな」


遊「そりゃそうだろう?まだまだ花嫁修業が足りないんだ」


ク「どんだけレベルの高い花嫁目指してんだよ。遊星のレベルで十分高いと思うんだけどな」


遊「ミスがあったら、まだまだってことだ」


ク「そんなもんかねぇ…」




++++++++++++++++++++









ク「ごちそうさま!美味かったぜ!」


遊「お粗末さまでした」


ク「食器は俺が片付けるから、先に風呂入ってこいよ」


遊「良いのか?」


ク「夕飯作ってもらったからな、先に風呂でゆっくりしとけよ」


遊「じゃあ、お言葉に甘えて…」


ク「後でタオルとか脱衣所に置いとくからな」


遊「後、着換え借りて良いか?そのまま着たから、制服しかない」


ク「そういえばそうだな。じゃあ着替えもタオルと一緒に置いとく」


遊「悪いな、お先にお湯貰うぞ」


ク「ごゆっくりー」
















遊「クロウ、入って良いぞ」


ク「あぁ、上がったの…か……、っ!!///」


遊「どうした?顔真っ赤だぞ?」


ク「な、なんでもねぇよ!じゃ、入って来るな!」


遊「あぁ…、?」








ク「やべぇー、何かやべぇー///遊星って着やせするタイプだったっけ…ッ!?俺の服丁度いいと思ったのにブカブカだったしよ…、って!なんでこんなにドキドキしてんだよ俺!落ち着け!///」




+++++++++++++++++++









ク「はぁ……さっぱりした…」


遊「お茶飲むか?」


ク「ん、貰うー…っておぉい!!?」


遊「何だ奇声上げて」


ク「今の奇声だったか!?いや、そんなことはどうでもいい!お前髪の毛しっかり拭かないと風邪ひくだろッ!」


遊「髪の毛乾かすのが面倒なんだ」


ク「お前本当に女の子かよッ!ほらタオル貸せ!」


遊「むぐっ」


ク「たくっ、こういうとこは昔から成長してねぇな…(ワシャワシャ」


遊「……いつもクロウが乾かしてくれてたから、その癖がついてるんだろ…」


ク「なんだよ俺のせいかっての」


遊「クロウに髪を乾かされるのが身についてるってことだ」


ク「あのなぁ、お前…それでその先どうすんだよ。一人で髪乾かせんのか?」


遊「え……、クロウが乾かしてくれるんじゃないのか?」


ク「……は?」


遊「これからも、お前が乾かしてくれるんじゃないのか?」


ク「……遊星、本気で言ってんのか?」


遊「……?」


ク「(え、何だよこいつ…無自覚すぎるのも度が過ぎてるだろ…///それじゃあまるで…)」


遊「クロウ?」


ク「……それじゃあまるで、俺がこれからもお前の傍に居るって言ってるようなもんじゃねぇか」


遊「……違う、のか?」











――ドキッ!













ク「お…まえ……っ////(カァァァ」


遊「?」


ク「反則だろ……、馬鹿…////」


遊「クロウ?」


ク「……遊星、これだけ言っておくぞ」


遊「なんだ?」


ク「俺は…その、結構前からお前が好きだった。そのことを意識しない様にしてきた。お前のためにだ」


遊「……俺を?」


ク「なのにお前は、いちいち俺の理性を崩すような発言をしやがる。遊星、さっきのお前の言葉は、期待しても良いととっても良いのか?」


遊「さっきの?」


ク「俺がこれからも当たり前のようにお前の傍にいるという意識にだ」


遊「……いつから?いつから俺を好きだったんだ?」


ク「……覚えてねぇよ、昔すぎて」


遊「今まで隠していたのか?」


ク「あぁ。お前を困らせたくなかったからな」


遊「……そうか、すまなかった」


ク「別に謝る必要はねぇだろ」


遊「……クロウ、これからも俺を好きでいてくれるか?」


ク「は?」


遊「正直、俺にはまだ自分がどういう気持ちか分からない。でも…多分だが、俺はクロウが好きだと思う。ハッキリとは断言できないが」


ク「遊星…」


遊「俺が自分の気持ちを見つめ直すまで待っててくれないか?その時に、今度は俺からクロウに、改めて告白する」


ク「……分かったよ、お前がそう言うんなら」


遊「有難うクロウ。お前の気持ちは嬉しい…本当に。俺もクロウが好きなんだと思う。今はそれだけ言える」


ク「俺には十分な答えだよ」


遊「だから、その時まで俺のことを好きでいてくれ」


ク「そんなこと言われてもな、もう何年好きだったかも覚えてねぇ。ここまで来て、簡単に捨てられねぇよ、この気持ちは」


遊「それなら良かった…」


ク「…こんなこと言うのもなんだけど…、抱きしめて良いか?」


遊「……駄目だ」


ク「ですよねー…」


遊「俺から抱きしめる…(ガバッ」


ク「ぅおぉお!!?/////」


遊「……暖かい…」


ク「くそ…やられた…///(ギューッ)すっかり冷たくなってんじゃねぇか…」


遊「湯冷めした。クロウは上がったばかりだから、凄く熱いな」


ク「別な原因もあるけどな……」


遊「……気持ちいい……、今日はこのまま寝る」


ク「はぁあ!?/////」


遊「…駄目か?」


ク「お前…どんだけ俺を試してんの…試練か?これは試練なのか!?////」


遊「試練って?」


ク「何でもねぇよ!もう好きにしろよ畜生!///」


遊「ん…、おやすみ」


ク「はぇえな!!……本当にこの体制で寝るのかよ…ッ///」


遊「……(スゥー」


ク「……我慢すりゃあ良いんだろ、我慢すりゃぁ…きっついなー…生殺しじゃねぇか…っ」




[ 35/211 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -