「家出A」





遊「クロウ、もうお昼だぞ?クロウ?」


ク「……ん……も、昼か……っ、昼!?」


遊「もう昼過ぎ。よほど疲れてたんだな…一応朝に起こそうとしたんだが、軽く揺さぶっても起きなかったから…」


ク「(そりゃ…朝方近くまで寝付けなかったのが原因だもんな……)」


遊「昼食出来てるから…食べるだろ?」


ク「………食べる。その間に顔洗ってくる…」


遊「あぁ」









――ピンポーン








遊「……お客みたいだぞ?」


ク「んー?客ぅー?」








――ガチャッ






ク「はいはい、どちらさ……」


不「ゆうちゃぁああああん!!!(ガバッ」


ク「ぶふっ!!(バタっ」


遊「と、父さん!?」


不「ごめんよゆうちゃぁああん!パパが悪かったぁぁああ!!」


ク「くるっ…苦しッッ!!」


遊「父さん!!クロウを離せ!!クロウを殺す気か!」


不「ゆうちゃああ……あれ?クロウ君?あぁ、ごめんよ!間違えた!」


ク「……なんなんだ…一体……」


不「あぁ、しっかりするんだクロウ君!傷は浅いよ!」


遊「父さんがやったんだろう!」


不「だ、だってゆうちゃんが家出なんてするから…!!」


遊「誰のせいだと思っているんだ!!」


不「私のせいだよ、ごめんねゆうちゃん!!」


ク「……あのさ……取り込み中悪いんだけど…」


遊「なんだ?」


不「どうかしたのかい?」


ク「ここ、一応アパートだから……玄関前で騒ぐのは…止めてくんねぇかな?こっちにもご近所付き合いってもんがな…?」


遊「……すまない」


不「……申し訳ない」


ク「だから…親父さんも上がってくれ」


不「ごめんね、お邪魔するよ」



++++++++++++++++++++




不「クロウ君もすまないね、ゆうちゃんが突然家に押しかけたんじゃないのかい?」


ク「いや、俺は構わねぇんだけどさ……そもそも、何が喧嘩の原因なんだ?」


遊「クロウも聞いたら怒るぞ……と思う」


ク「はぁ?俺が怒るかも…ってことは、俺にも関係があんのか?」


遊「父さん、父さんの口から説明してくださいね」


不「……私が説明するのかい…?」


遊「えぇ。勿論です」


不「………分かった、殺される覚悟は出来た。クロウ君にも教えようじゃないか」


ク「殺される覚悟って……どんだけ俺が怒りそうな内容なんだよ…」


不「実はね……仕事の都合で、遊星にお見合いの話がきたんだよ。断っても良いんだが、私の仕事の立場上、簡単に断れなくてね…。
  だから、遊星に相手に会うだけで良いから、行ってくれないかな―……と(チラッ」


ク「…………」


遊「…………」


ク「…………あ゛?」


不「凄く反省してるからその黒い感情が篭った目で見るのは止めてくれないかな……っ」


遊「クロウ、俺が怒って家出する気持ちが分かっただろう?」


ク「あぁ、かなり分かった」


不「うぅ……いつも以上に声が低いよクロウ君……っ」


遊「俺にはクロウが居るんだぞ?なのに他の人とお見合いをしろと言うんだ。可笑しいじゃないか」


ク「………だが、親父さんの気持ちも分かる」


不「く、クロウ君…!わ、分かってくれるのかい?」


ク「働いてると、立場上どうしても断れない事もそりゃあるな。そこは分かるぜ」


不「そう!そうなんだよ!」


ク「だけどな、俺が怒ってんのはそういうことじゃねぇんだよ。そういう事は、俺と遊星二人に相談するもんじゃねぇか」


不「クロウ君に…ちょっと言い難くてね…」


ク「別に俺はそこまで口は出さねぇよ。親父さんの仕事の都合だし、不動家の問題だからな」


遊「クロウ……」


不「で、でも…もしもお見合いして、断りきれなくて話が進んでしまったら…?」


ク「簡単なことだろ。遊星を奪って逃げりゃ良い話だ」


不遊「「カッコイイ……」」


ク「ま、親父さんにもメンツってもんがあるんだからよ、行くだけ行ってやれよ遊星」


遊「だが……」


ク「俺がこう言ってるのも、お前を信じてるからだぞ?」


遊「……分かった。会うだけ会う…」


不「私も、その後しっかりお断りするよ。遊星の相手はクロウ君しか認めてないからね」


遊「父さんは相手が誰でも認めるのかと思っていた」


不「私はそんなに信用が無いのかい!?」


ク「今までの行いだろうよ、親父さん」


不「そう言われちゃ…何も言えないなぁ…」


ク「頑張ってこいよ、遊星。適当に話合わせとけ」


遊「相槌しか打たないさ」


不「一応解決した事だし、私は仕事に戻るか…。ゆうちゃん、帰るよ」


遊「え」


不「え、じゃなくて……もう仲直りしたじゃないか」


遊「いや、そうじゃなくて……もう少しここに居る」


不「ま、まだ許してもらえてない?!」


遊「違う、そうじゃなくて…っ!ただ……もう少しクロウと一緒に居たいだけだ……///」


ク「遊星……///」


不「はいはい、お熱い事だね。分かったよ、でも夕飯前には帰って来るんだよ?」


遊「……はい」


不「それでも寂しかったら、夕飯時にクロウ君も連れて来なさい」


遊「あぁ、分かった!」


不「クロウ君と一緒だと、嬉しそうに返事するんだから…」


ク「思った以上に愛されてんなー、俺///」


不「これだったら、お見合い相手の出る幕は無いね。遊星、思いっきりぶち壊してやんなさい」


ク「そのアドバイスもどうかと思うんだけど…」















ク「でもまあ、まさかお見合いとはなぁー……」


遊「クロウがお見合い相手だったら、喜んで行くんだがな」


ク「それもうお見合いじゃねぇよ。密会っつーんだよ」


遊「それもそうか」


ク「ま、どんだけ俺が愛されてるかは分かったから、もう良いんだけどよ」


遊「あぁ、俺もどれだけクロウに愛されてるか分かったぞ。昨夜は手を出してこなかったからな」


ク「バレてたのかよ……っ」


遊「クロウは分かりやすいからな」


ク「……なのに放置してたお前…隠れドSだよな…」


遊「クロウが思い切って手を出してくれば良かっただけの話だろう」


ク「……時々何が正しいのか分からなくなる。とりあえず、そのセリフからしていつでも襲って良いってわけだな?」


遊「昼食食べたらな」


ク「昼食食ったら良いのかよ。お前微妙にズレてんのかそうじゃないのか…分かんねぇわ」


遊「褒め言葉として取っておく」


[ 28/211 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -