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すとにぃさんより







雨の森で


「…雨」
ヒプノックが静かに呟いた。
「ルゥちゃん、雨降ってる」
するとイャンガルルガが口を開く前に、雨自身が それに応えるように徐々に雨脚が強くなっていっ た。これは、雨宿りをしなければ。二人は急いで 立ち上がると、樹海の奥地にある洞窟に向かって 走り出した。

――

「……強い、」
「だね…」
イャンガルルガの言う通り、雨は降り始めよりも 倍の強さで降り注いでいた。なのだが…。
「なんか…皆遅くない?」
「……」
そう。いつもなら急ぎ足でやって来るはずの他の 住人達が、誰一人この洞窟に姿を見せてこないの だ。特にアイルーやメラルー、プーギー辺りは人 一倍雨を嫌うはずだから、彼女らが二人よりも早 くこの洞窟にいないのはある意味異常事態と言え るかもしれない。どうしたのだろうか。
「めっちゃ不安なんだけど…どうしようルゥちゃ ん!?」
「…もう少し、様子見…しよう」
イャンガルルガは独特な途切れ口調でそう言っ て、ヒプノックの肩に優しく手を置いた。すると その時。
「あ、ここにいた…おーい!!」
「黒狼鳥と眠鳥のお二方、助けてくれんか!」
二人の背後から聞こえたのは、プーギーとアプト ノスの呼び声だった。目を向けると二人の全身は やはりびしょびしょであったが、そんな事など全 く気にせず、それよりも何かに焦っているように 懸命にイャンガルルガとヒプノックを呼び続けて いた。その声にはさっきまで走っていたのか、苦 しそうな呼吸音が混じっている。 …まさか、本当に緊急事態が起きたのかもしれな い。直感で悟ったイャンガルルガとヒプノック は、駆け足でそちらへと向かっていった。
「どうしたの?何かあった?!」
ヒプノックが尋ねると、プーギーは涙目で見上げ てきた。
「あのね…アイルーちゃんとメラルーちゃんが ねっ…何処探してもいないのぉ!」 そ
れはもはや、返答というよりも叫びだった。次 第にプーギーの瞳からは、雨にも似た雫があふれ てこぼれる。
「いつもならアイルーちゃんとメラルーちゃんと は一緒に遊んでるんだけどね、今日は『二人で話 したい事がある』って言うからアプトノスおじい ちゃんとずっといてね…そしたら急に雨が降って きたから、とにかく雨に濡れたくないと思ったか ら、とりあえず近くの木の下で雨宿りしてたんだ けど…でもいつまでもアイルーちゃんとメラルー ちゃんが帰って来ないから、おかしいと思ってお じいちゃんとあちこち探し回ったんだけど、でも 何処にもいないの!!」
プーギーは指を、雫を掬い取るように瞼の下に宛 がった。隣にいるアプトノスが、プーギーの感情 を鎮めるように落ち着いた口調で、呟くように 言った。
「あの子らとは血は繋がっておらんが、私の中で は本当の孫のようにかけがえの無い存在になって おる。二人を探したい気持ちは十分過ぎるほどあ るのだが、儂のような老い耄れやプーギーのよう な幼子にはこれ以上雨の中での捜索は難しくて な…草食種の分際で言えた事でないのは百も承知 だが、どうか…もし出来たら我々に手を貸してほ しい」
アプトノスは過去に妻と子どもを亡くしている。 そんな彼にとって、いつも自分と遊んでくれるア イルーやメラルー、それからプーギーは孫同然の 存在なのだ。アプトノスは、嗚咽を漏らすプー ギーの頭を撫でながら俯いた。 今までの話やその悲し気な表情に心を揺らされた ヒプノックは、イャンガルルガと目を合わせる と、お互いに大きく頷いた。
「わかりました!今から私達二人で捜してきます!!」
「…此処で、待ってろ」
性格こそ正反対のヒプノックとイャンガルルガだ が、この瞬間に二人の中に芽生えた力強い意志は 同じものだった。
「…恩に、着るぞ」
顔は俯いていて見えなかったが、どうやらその言 葉に老人も泣き出したらしい。声と共に鼻を啜る 音が聞こえた。
「必ず、見つかる…から、もう、泣き止め」
言い方こそ無愛想だったが、穏やかな口調でイャ ンガルルガは二人に言い聞かせた。
「ルゥちゃん、行こう」
「…ん」
ヒプノックがイャンガルルガの手を引くと、プー ギーとアプトノスは二人の行く手を開けようと横 にずれた。 …雨はさっきよりは強くないが、それでも激しい 事に変わりはなかった。しかし今、それに恐れず に立ち向かおうとしている者がいる。 手を繋ぎながら二人の竜が、泣き濡れた迷子を探 しに旅立った…。




すとにぃさんから相互記念品として頂いてしまいましたぁぁああああ!ヒプノックとイャンガルルガナイスコンビ(^q^)
迷子ちゃんたちを緊迫したムードで探しに行くというのに、なんだか二人のコンビにほのぼの和んでしまう…!
頂いた小説だけでなく、すとにぃさん宅のヒプノックとイャンガルルガが続きどんな話になるのかもすっごく楽しみにしてます!!//

この度は!相互してくださりありがとうございます!こんな不甲斐ない奴ですがこれからよろしくお願いします\(^O^)/










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