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ゴマ団子の気持ち




この世には深く考えすぎてしまったり、軽く考えてしまうことがある。


「それ…なまえちゃんのお土産じゃないの…?」

「いいんだぁーてぇ!内緒にすりゃわからねぇっよー」

「酒くさ…ぃ…私知らないよ…?」


心の曇りはいつまで経っても晴れやしない。



私の得意なことはゴマ団子を作ること。
これだけは絶対に誰にも負けないわ。


「と言うわけでゴマ団子作ります!」

「どういうわけで!?」

「ほれほれ平ちゃんは巡察行ってきなさいな」


鋭いツッコミで有名な「誰も知らねぇよ!」うっせぇな…。


「早く仕事行けぇ…っていないし」


逃げ足速いな!

で、どこまで話したっけ…そうそう、平ちゃんは可愛い可愛い私の恋人ってわけよ。


「なまえちゃん…誰に話してるの…?」

「千鶴ちゃーん!待ってた!」

「えっ?あ、うん、お待たせしました?」

「早速作ろーっ」

「何を!?」


たまたま通りかかったであろう千鶴ちゃんを捕まえて、いざゴマ団子作り!


「なまえちゃん手際すごい良い…!」

「千鶴ちゃんに褒められるなんて私も捨てたもんじゃないねぇ」

「いやいやいや何言ってるの」


何言ってるのって言われても、家事全般完璧にこなし、性格もお人好しの優しい子、おまけに容姿は可愛くて…完璧やん!
そんな子に手際良いとか褒められたら、そりゃねぇ!調子乗っちゃいますよ!


「お、いい匂いだな」


鼻歌がどんどん溢れ出ながらゴマ団子を揚げていたら、不意に左之さんが顔を覗かせてきた。


「つか、なまえはえらいご機嫌いいな…」

「千鶴ちゃんき褒められたからね!」

「千鶴…こいつに何て言ったんだ?」

「手際良いねって言ったんですけど…」

「そりゃあ調子に乗るわけだ」


呆れ顔の二人は目に映りません。
その内、左之さんが思い出したように千鶴ちゃんに向く。


「そういえば土方さんが千鶴のこと探してたぜ」

「え!土方さんが?何なんでしょう…」


パタパタパタパタと駆けて行ってしまった千鶴ちゃん。
あぁ…行っちゃった…。
でも走る姿可愛いなぁ!


「よだれよだれ」

「おぉっと!女子たるもの」

「お前女だったのか」

「何おう!?」


なんと無礼な男なんだ!
女子には優しいのが取り柄ではないのか!


「じゃあ優しくしてやるよ」

「は…」


いきなり壁に追い詰められたワタクシ。
両手は左之さんの手で押さえつけられて動かない。
これが男と女の力の差ってやつか…っ!


「何、この状況…左之さん?」

「なんで平助なんか選んだんだ…」

「え、」


ニコッと笑顔を見せたかと思ったら、もの凄い五月蝿い足音がダダダダダ「左之っさぁぁぁぁん!!!」聞こえた。


「平ちゃん!?」

「何やってんだよ…!」

「ふ…仲良くやれよー」


訳が分からない…。

左之さんはそう言い残したらどこかへ行ってしまわれた。

手が少し痛い。


「平ちゃんおかえり」

「何か変なことされなかったか?」

「別に特には」

「良かった…」


そういえば、平ちゃん巡察中なんじゃないの?
ここにいるってことは、もう終わったってことかしら。


「平ちゃん随分とお早いおかえりですね」


そう聞くと、平ちゃんは一層深刻な顔をして、ポツリポツリと語り出した。


「行く前に左之さんに言われたんだよ…『あまりなまえに寂しい思いさせるなよ』って…」

「寂しい思い?左之さんも変なこと言うなぁ」


面白いね、と私は笑う。
まさか左之さんに私の気持ちがバレていたなんて、そんなことない。
寂しいなんて思っていない。
絶対に思っていない。


「もう、いいよ…我慢すんなよ!なまえの気持ちが聞きてぇんだ…!」

「…平ちゃん」


今、わかった。
私が悩んでいたように、また平ちゃんも悩んでいたんだ。

私は迷惑をかけまいと、平ちゃんは言ってくれないもどかしさに。

お互い、すれ違いしすぎたんだね。


「平ちゃんは私を選んだことで後悔してるんじゃないかってずっと思ってたの…。だって私は千鶴ちゃんみたいに完璧じゃないから…」


初めて打ち明けた私の心の内。
平ちゃんの言葉を聞くのが怖い。
今すぐこの場から逃げだしたくて、でも竦んでしまって動かない。


「俺は、」

「…っ!」

「なまえじゃねぇと駄目なんだよ」


頬を平ちゃんの両手に挟まれたと思ったら、下を向いていた顔を上げられた。
至近距離で目が合う。


「じゃあ…ふ、不安にさせんなよ!馬鹿!」

「あぁ、ごめん」


どちらかとなく、唇を合わせる。
あんなに不安で仕方なさすぎた心の曇りは、驚くほどに晴れて。

答えは簡単だったのに、私が変にややこしくしていたみたい。


「あ!ゴマ団子じゃん!食っていい!?」

「いいよ、平ちゃんの為に作ったようなもんなんだから!」


これからは迷惑なんて思わなくていいのね!

じゃあとりあえず、質問をしてみよう。


「平ちゃーん」

「ん?どした?」

「この間、千鶴ちゃんだけにお土産をあげたのは何でかしら?」

「知っ、てたのか…」

「えぇもちろん」


青ざめた彼は引きつった顔で「土方さんに報告しに行くの忘れてたなぁ…」って言って、逃げた。


「待てぇぇぇぇぇ!馬鹿助ぇぇぇぇぇ!」





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お酒の飲み過ぎには気をつけましょう。


(2012.4.6)









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