エイプリルフール返し最近、彼が愛の言葉を口にしてくれない。 前は忙しくても言ってくれたのに。 そこで私は決心した。 「L…別れましょう」 今日Lの本心(愛の言葉)を聞く! 嘘をついて良い、このエイプリルフールを使って! 作戦はこうだ。 私が別れたいと嘘をつく。 ↓ 何で?と理由を問われる。 ↓ Lの気持ちがわからないと言う。 ↓ 焦ったLは、必死に説得(愛の言葉)をする。 ↓ ネタバレ。完璧。 嘘の中に本当を紛れ込ませたら真実味が出るらしい。 この間、なんかのドラマで言ってた。 この私の完璧な作戦にどうでるか! 「いいですよ」 ほらきた! さて理由を…って。 「えぇ!?あっさり即答!?」 「なんですか。あなたから言い出したことでしょう」 「だからって、こう引き止めるとか」 「引き止める理由がありません」 そんな真顔で…あっさり別れられるの? 私ってそんなもん? そう考えたら、ふつふつと怒りが煮えたぎってきた。 「この…人でなし馬鹿たんてぇえええええ!」 もう顔も見たくなくて、外に逃げた。 あいつのことだから、追いかけてくるなんて手間のかかることはしない。 外は酷い土砂降りで、もう踏んだり蹴ったり。 近くの公園の私しか知らない秘密の場所。 少し前に見つけて、暇があれば来ていた。 そこに行けば誰にも、勿論Lにも見つからないだろう。 「あの糞甘党め…」 ちょっとした意地悪のつもりだった。 ただ本心が聞きたかっただけだった。 それが、思わぬ本心を聞くことになるなんて。 言わなきゃ良かったという後悔と、Lにとっての私はこんな程度の女だっていう事実が混ざり合って出てきたのは涙。 雨と共に次々と地面に落ちていく。 「今日がエイプリルフールだっていう推理もできないのかよ…」 世界の切り札とか言われるぐらいなら、それぐらい推理してみせてよ。 「できてますよ」 そう、そうやって何でもないように…え? 後ろを振り返るとL…? なんでここにいるの? 「!?え、えむふっ」 L、と言おうとしたら口を塞がれた。 そっか、誰も来ないかもしれないが一応外。 Lの名前を出すことは命に関わってしまう。 「ごめん…でも何でここがわかったのよ」 ここには一度も来たことのないLが、何故この場所にたどり着けたのだろう。 「なまえさんの考えることは全部わかってます」 嘘つき。 さっきはわからなかったくせに。 飄々としている彼にそんな心の声をぶつけてみる。 「じゃあ…なんでさっきのはわからなかったのさ…」 キョトンとした顔が憎らしい。 どうせ私のことなんか…。 「さっきの?あぁ、なまえさんがエイプリルフールということを利用して、私の気持ちを吐かせようとしていたことですか?」 …は。 え、嘘、バレ…てる? 正しくその通りなんですが…。 「なので私はエイプリルフール返しをしてみました」 「嘘を嘘で返すってこと…?」 ってことは、別れるっていう嘘に承諾っていう嘘で返したってことなの? 引き止める理由もないって言ったのも嘘? 質問攻めした私にLは一言。 「そうです」 くそぅ…ややこしいな。 こいつの場合、表情がないのがまたややこしい。 「…別れましょう?」 「それは本気ですか?」 あ、眉毛がピクッと動いた。 というか、これは怒ってる…? いや、確実に怒ってる。 オーラが怖い。 まじで怖い。 「嘘ですごめんなさい」 「私だって別れたくありません」 あ…視界が真っ暗。 雨のせいで濡れたTシャツが張り付いている胸元に寄せられて、直に体温が伝わってくる。 「暖かいな…」 「さぁ帰りましょう。風邪を引いてしまいます」 その言葉通り、私は風邪を引いてしまう。 でも、Lがずっと看病してくれたのだとか。 ワタリさん曰わく、飛び出した後のLの慌てぶりは目を見張るものがあったらしい。 何をそんなに不安だったのか、今では幸せ者だなと感じ…。 「なまえさん愛しています」 「ワタリさんがいるのでやめてください。恥ずかしいです」 「そんな恥ずかしがってる姿も素敵です」 どうやら何かを開花させてしまったらしいです。 ********** 変態Lさんを愛しています。 (2012.4.1) |