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もう救えない




※若干アレン寄り











覚悟はしていた筈だった。

ラビが女好きで、目移りしやすいこと。
そして、私には魅力なんて微塵もない故に、ラビがすぐに浮気してしまうのではないかという推測が実現することを。

その時は傷つかないように、と頭の中で何度もシミュレーションした。

なのに、なんで涙が出るんだろう。
心が痛くて泣いている。


「馬鹿だなぁ…」


わかっていたことなのに。

私にもっとラビを惹きつけるような魅力があったら良かったのにって思ってしまう。

目の前で、科学班の可愛い女の子とキスしているラビ。
二人とも私には気づいていないようだけど、私は気づいてしまった。
気づかなければどんなに良かっただろうと後悔したところでもう遅い。

知らないふりをしてしまおうか、それとも「馬鹿!」と言って殴ろうか。

答えは既に決まっている。
私は嫌われたくないから、臆病だから、いつも当たり障りのないように言葉を選んで、本心は自分の中に閉じこめてきた。

この場合は前者にすることが、私自身の正解。「なまえ?どうしたんですか?」

「あ、アレン!?いや、なんでもないの!あっち行こう!」


突然現れたアレンに吃驚してしまい、自分でも予想外な大声を出してしまった。

当然、ラビたちが気づかないはずもなく。


「なまえ…?何やってるんさ…?」


バレてしまった。

悪いのは私じゃないんだけど、どうしても悪いことをしてしまったような気になってしまう。


「ラビくん、その子は誰?」


後ろの女の子が問いただす。

ラビの顔は青ざめていて、アレンは怒り出した。


「ラビ!あなたはなんてことを「アレン!」なまえ…」

「私はラビとはただの戦友です」


涙を見られたくなくて、逃げてしまう弱虫な私。

ここで怒ってもいいのかもしれない。
でも、良い子ぶってしまう私はただの偽善者。
自分自身が傷つきたくないだけ、それだけのこと。


「待ってください!」


追いかけてきたのは、ラビではなくアレンだった。

期待してないと言えば嘘になるけど、これは予想していなかった。
更に、アレンに抱きしめられるなんて予想外すぎるのもいいところ。


「ちょ…っ!アレ…!」

「僕じゃダメですか?」

「ダメって…」

「僕じゃなまえの支えになりませんか?」


いつになく真剣なアレンの声に、見た目から想像つかない逞しい身体に、ドキドキしない筈はなかった。

それでも、過ぎってしまうのはラビの顔で。


「ア、レン…ごめん…これがラビだったらいいなんて最低なこと考えた…」

「いいですよ。これから僕にすればいいんです」


最初っからアレンを選んでいたらこんな苦労はなかったのかもしれない。


「アレンを選ぶだなんて…絶対っぜぇぇぇぇったいダメさー!」

「っていう夢を見たってだけじゃない」


ここは食堂。
アレンがいて、リナリーがいて、私がいて、もちろんラビもいる。
いつも通りの朝の光景。

アレンとリナリーは苦笑いしながら、昨夜私が見た夢を聞いてくれていた。


「なまえは俺のもんなの!アレン勝手に抱きつくな!」

「夢の中なんで不可抗力です…。だいたいラビがいつもストライクとか言っているのが原因じゃないんですか!」

「それは男として仕方ないっつうか…」

「そんなんだったら、いつか本当にアレンについちゃうからね!」

「僕を巻き込まないでください」

「なまえごめんてー!」


エクソシストたちの1日は騒がしい朝から始まるのでした。





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まさかの夢落ち。
実はラビの惚れ癖を直してほしい策略だったりする話。

(2012.4.1)









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