ギフト、短編用 | ナノ




勘違い擦れ違い




全て自分の心の中に収めれば、丸く収まる。
ただ、それだけ。


「なまえちゃん!」

「あ、松田さん。どうしました?」

「いや、最近眠れてないよね」

「そんなことないですよ?」

「本当?ならいいんだけど、結構竜崎から仕事貰ってるでしょ?」

「大丈夫ですよー!そういう松田さんもあんまり眠れてないじゃないですか」

「まぁねーはは」


そう言って松田さんは行ってしまった。
眠れてないないのはみんな同じ。
でも、私は仕事を理由に竜崎に会いたくなかった。

私たちは公認で付き合っている。
だから、キスはしたし、それ以上のことをしたりもした。
仕事も手伝えるし、それなりに幸せを感じていた、のに。


―・―・―・―


その日はいつも通りに竜崎に“おつかい”を頼まれて、報告しに行った時だった。

ウィーンという自動ドア独特の音と共に入ってきた光景は信じがたいもので。


「ぇ…」


竜崎と知らない女の人がキスしている光景。

これは夢?

そのまま見ていられなくて部屋に直行した。


―・―・―・―


それが、ほんの一週間前。

竜崎からは何も言われないし、私も何も言わない。
なんだかどうでもよかった。


「まぁ、いっか」


それきり、深く考えることをやめてしまった私。
でも、やっぱり竜崎の顔を見ると涙が出てしまいそうになって。
必要以上の仕事をもらって気を紛らわせていた。


「ふぅー…。少し疲れたかな」


お休みをもらってこよう、と竜崎がいるだろう部屋に向かう。

ウィーンと音がする自動ドアの先。


「ん…竜崎…っ」


あれ、デジャヴ。
すぐに部屋を出て、少し走った所でしゃがみ込む。


「また、か…」


一回だけなら、まだ、収められたかもしれない。
でも、今回は二回目。


「これは…もう、駄目なのかな…」


仕方ない、もう出て行けなどと言われようが、殺さなくてはいけないと言われようが竜崎の言う通りにしよう。

でも、


「なまえ!」


私はまだ、


「り、竜崎…」


竜崎のことが、


「待ってください…なまえ…!」


好きだから。

息を切らして走ってきた竜崎を見るのは初めてで、少し吃驚だ。


「どうしたの…?」

「先ほど私のところに来ましたよね」


何?その問い詰めるような言い方…。


「行ったけど…」

「何故、声をかけなかったんですか?」

「いや、それは…」


言えるわけないじゃない!
それを、私の口から言わせたいわけ?

竜崎の考えていることがわからないよ。


「誤解をしているようなので一つ言っておきますが、」


ご、か…い?


「私が好きなのはなまえだけで、なまえ以外の誰ともキスをする気はありません」

「でも、さっきのは、」

「あれは私の寝ている間にウェディが勝手にしたことです」

「勝手に…?じゃあ先週のも…?」

「先週?先週もしていたんですか…。ウェディには後できつく言っておかないと」

「な、なんだぁ…っ!」


じゃあ、私はずっと誤解したまま悩んでいたのか。
それにしても。


「寝ている間にキスされるなんてらしくないわね」

「すみません…不覚でした。最近、なまえが頑張ってくれているので寝る時間が増えたんですよ」

「なら、一緒に寝ようよ」

「はい、これからはそうします」


まぁ、いっか、って思う前に竜崎とちゃんと向き合っていればよかったのか。


「なまえ」

「竜崎、何?」

「本名で呼んでください」

「ここで…いいの?」

「今、呼んでください」

「…エル」

「はい」

「好きだよ」


そう言ったら、「愛しています」と言われ、唇が重なった。





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今年一発目です。
相変わらず着地点が見えず申し訳ないです。

L大好きだー!

(2012.1.5)









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