隠す人微裏注意。 この人を愛すると言うことは我慢を多くしなくてはいけないと言うこと。 目の前でパソコンに向き合いながら甘味を口にしている私の恋人、Lは世界一有名な探偵さん。 そのため、非常に多忙で寝る暇もないほど。 そんな彼に我が儘など言えるわけがない。 「(まぁ、私も仕事を手伝っているし…忙しいからな…)」 それでも…。 触れてほしいと、キスしてほしいと、抱きしめてほしいと、 「なまえ、この資料をワタリに」 「はい」 そのローボイスで愛を囁いてほしいと、願う私は…。 「(相当な我が儘…)」 顔に出さないよう、仕事の邪魔をしないよう、気を張らなくては。 迷惑、と言われてしまっては立ち直れる気がしない。 「ワタリさん、Lから資料です」 「ありがとうございます。なまえさん」 ワタリさんはニコッと笑いかけてくれ、なんだか落ち込んだ気分も晴れる。 「いえ!では…」 「あ、待ってください」 「?はい」 差し出された物は可愛らしく彩られたお菓子の数々。 言わずもがな、Lの糖分たち。 「Lにですね!」 「はい、お願いします」 「了解ですっ」 ワタリさんにも任務を任され、いや、ただLにお菓子を持って行くのが嬉しくて仕方なかっただけ。 「なまえさんは本当にLのことが好きですね」 「あったりまえです!」 ふぉっふぉっと笑うワタリさんにお辞儀して、Lの元に急ぐ。 はやく嬉しそうな声を聞きたくて。 「L、お菓子です」 「ありがとうございます」 ほら、嬉しそう。 夢中になって頬張る彼の横顔を見ていたら、愛おしくて。 「何、笑ってるんですか」 「いえ、幸せだなと」 これだけで幸せを感じてしまう私は単純なのだろう。 「幸せ…?なんでです…?」 「こちらの話しです」 あまり話し込んでも駄目なので早急に引き上げることにしなくては。 もっと一緒にいたい思いは押し込めて。 「では戻りますね」 「待ってください」 本日二度目の制止言葉。 Lから「待ってください」は珍しいなと思いながらも顔だけ向けると、腕を引かれ、気がつけばLの腕の中に収まっていた。 「L…?どうしたんですか?」 「何か隠し事をしていますね」 ドキリ。 我が儘を知られてしまってはいけない。 Lを困らせてはいけない。 「何もありませんよ…?」 「では吐かせるまでです」 「へ!?ちょ!え、L!?」 するりと、背中に回されたLの手が服の中に滑り込んできた。 そしてそのまま撫で回される。 私は急な出来事についていけず、Lの服を掴みながら恥ずかしさに耐えるしかなくて。 「L…っ」 「言わないのであればなまえを食べます」 「言う!言うから!」 そう懇願すると、残念そうに手を離す。 見下ろすLの目は優しくて、なんだか泣きそうになってしまう。 今から貴方を困らせてしまうのに。 「わ、私は、その…」 「ゆっくりで大丈夫です」 「ごめんなさい…Lを困らせるだけでしかないのは承知です…だけど…」 だけど、の先が中々言えず。 だって言ってしまってLに捨てられたら? そんなの生きていけない。 口にしてしまうのが、怖い。 「なまえ…?」 「Lが大好きです…っ」 これが私の精一杯の甘え。 臆病で弱虫な私の言葉。 「知っています」 同時に重なる唇からは、Lの想いが伝わるようで。 「…っは…える…」 「なまえ、愛しています…」 あぁ、何を不安になっていたのだろう。 先の見えない不安は、貴方の一言でどこかに吹き飛んでしまった。 「ありがとう…!」 嬉しくて涙がでてきてしまいそうになる。 こんなんじゃ、まだまだだな…なんて思っていたら、Lが私をジッと見ている。 「ふむ…」 「え、L?」 「ベッドに行きましょう。我慢できません」 「は…はぁっ!?」 「そんな頬を赤らめて、泣きそうな顔をされては襲いたくなります」 放心状態になりかけの私を簡単に持ち上げてしまい、その男らしさと近い未来に真っ赤になってしまうのは、 「真っ赤ですね」 「う、うっさい!」 仕方ないだろう。 ********* あれ、切ないものを書きたかったはずでした。 (2011.12.13) |