知らない感情って何? 「何か用ですか」 「へ!?いや、別に…あるような…ないような…」 「では失礼しま「あぁ!待って!」…はい…?」 ついさっき「みょうじっ!あのさ!」と呼ばれ彼、藤堂平助組長の話しを聞いているのだが…中々話し出さない。 仕事があるんだけれども…。 「なぁ、みょうじは、さ」 「?」 「笑ったり…しねぇの…?」 「…仕事上、笑ったりすることはありますが」 「仕事じゃなくて」 「仕事以外に笑うこと等、感情を出す必要性を感じません。では仕事がありますので失礼します」 何故。 そんなことを言われなくてはならないのだろう。 いや、本当は知っているんだ。 感情を出すことをしない私を心配してくれている彼の気持ちを。 ただ、感情を出さない一番の理由がある。 それを彼は、知らない。 彼の横を通り過ぎようとした時、腕を掴まれて先に進むことができなかった。 「…必要性がないとか言うなよ…」 「…。」 「必要性がない感情なんかねぇよ!笑ったり泣いたり、全部全部大事な感情なんだよ!お前にもあるだろ…っ!?」 生憎、一番の理由として昔からそんな感情持っていないことにあって。 「申し訳ありませんが、そのような感情は知りません」 「知ら、…ないって…」 持っていない、知らない。 筈なのに、何故、何故悲しそうな彼の顔を見て心が痛むのだろう。 「嘘、だろ?」 「ぇ、」 「泣いてまで嘘吐くなよ…」 私の目元に持ってきた彼の指が濡れているのは。 頬を伝う生暖かいものは。 「何、これ…」 こんなの初めてで。 「こんな、知らな…い…っ」 「…そっか。本当に知らないんだな」 彼曰く、これは“悲しい”って言うそうで。 私は“悲しい”。 「今度は“楽しい”を覚えような」 ふわりと笑う彼に、胸が締め付けられる思いがしたのは何なのか。 私はまだ、知らない。 ********** シリアスを書きたかっただけ。 (2011.12.2) |