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お電話はいかが




死ネタ注意








「翔ちゃーんって…またお電話ですか…」


俺の日課は一日に一回あいつに電話すること。
あいつの声を一日でも聞かないと壊れてしまう。

それぐらい俺はあいつに溺れているんだ。


『もしもし』

「もしもし、俺俺」

『ふふ、オレオレ詐欺ですか?』

「ちげーよ!!」

『わかってるよ』


クスクス笑う俺の彼女は画家を目指している。
俺はアイドルになる為ここに通っているが、最初はとてつもなく悩んだ。
こいつに会えなくなると思うと行くのも躊躇ったほど。

だけど、悩んでいた俺に「私のせいで夢を諦めないで」と「私も諦めないから!」って背中を押してくれた、大切な人。


『こんな遅くにどうしたの?』

「遅くってまだ10時だぜ?」

『十分夜だよ』

「ほんとなまえは寝るの早いよなぁ」

『そうかな』

「そうだ!」


11時には寝る真面目で健気で偉い子だ。


「ったく、俺が不健全みたいじゃねぇか」

『そんな翔も好きだよ』

「えっ?!ちょ…不意打ちやめろって…っ」

『あ、今顔真っ赤でしょ』

「−っ!!そ、そうだよっ!!」

『翔かーわいい』

「かわいい言うな」


いつもこうだ。
俺をかわいいって馬鹿にしてくる。

退屈そうにしている那月を横目に、俺はなまえとの会話を楽しむ。


『もうそろそろ寝なきゃ』

「もうかよー…早ぇな…」

『また明日も電話できるでしょ?』

「そうだけどさぁ…」

『ふふ…また明日ね?』

「また明日っ!!絶対電話するかんな!!」

『はいはい、じゃね』

「おやすみ」


楽しい時間は過ぎるのが早い。
それが最近の悩みだったりする。
俺はもっとなまえとの会話を楽しみたいのに。


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「翔ちゃん…」

「なんだ?」

「いつまでそれを続けるつもりですか?」

「なんの話し?」

「だって…なまえちゃんは…」


続きを言おうとする那月を睨めば、それ以上何も言わなくなった。

知らないよ。認めない。
これが最後の会話だったなんて。










なまえが3ヶ月前に死んだなんて。





**********
いつまでも愛しい人がいなくなった世界を認めようとしない翔ちゃん。
書いていて楽しかったなんてそんなこと。

(2011.9.19)









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