最後の砦森の中に迷った。 「ここどこ?」 誰に問うわけでもなく。 また、誰かに問うて。 森林浴に丁度良いだろうこの森は、不安な私には不気味に見える。 「こんにちは」 不意に声をかけられ、肩が跳ねたのが自分でもよくわかった。 「誰…?」 「俺、藤堂平助ってんだ」 「藤堂、さん?」 「あーだめだめ、平助って呼んでよ」 「平助…」 「そうそう!」 人なつっこい人だなぁ。 にぱってした笑顔は腐った私にはとても眩しい。 関わるな。 頭がそう言っている。 頭が言うなら従おう。 「それでは」 「待って待て待て待て!」 「…」 「名前!教えてよ!」 ナンパ、か? こんな森の中でナンパも珍しいものだ。 何が目的だ。この男。 「怪しい人には教えられません」 「怪しい人?」 はははっていきなり笑い出す。 何かおかしいことでも言っただろうか。 「怪しいのはあんたの方なんだけど」 「は?」 「なんでここに来たんだよ…」 俯いてしまったので顔は見れないが、声が小さく震えている。 なんで来たって言われても、友達と山登ろうって誘われて、さっきまで休憩とっていたらいきなりここに…あれ? 「なに、これ…?」 「はやく出ろ!」 「え…」 思い出が記憶がデータがこぼれ落ちていく。 なんなの? 友達って誰?何してたんだっけ? 「えっと…」 「いいからっ全部なくなる前にすぐ出ろっ」 「出るってどうやって…」 「願え!」 “生きたいって!” 生き、た、い…? 私死んだの? 「見て!こっち綺麗だよ!」 「なまえ危ないよー」 「平気平っ!」 「なまえ!?」 あのとき、落ちたんだ…。 「生きろ!」 「平助…なんで、そこまで…」 「お前が好きだから」 「はっ?!」 「お願いだ…俺と会う前に死なないでくれ…っ」 “好きだよ平助” 貴方は、私の、 「絶対会いに来てよね…」 「ったりまえだろ」 恋人だった人。 「みょうじなまえ」 「なまえ、じゃああっちで」 「うん」 私は、「この人と生きたい」 ********** 前世は恋人でした設定。 転生したんですね、わかりづらいです。 (2011.9.18) |