慌ただしい夜。「おーわったぁっ」 ぐっと背中を伸ばせば、ボキボキボキッと音がした。 だいぶ長い時間机に向かっていたからね。 廊下に出ればなんだかバタバタと忙しい。 何かあるんだろうか。 「なまえちゃん」 「あ、沖田さん。何か騒がしいですね」 「僕が昼間、大きな獲物捕って来ちゃったからね」 「獲物?」 「そうだよ」 そう言って、いつも通りの笑みで廊下の向こうへと行ってしまった。 獲物…。 新選組にとっての獲物は、きっと長州の奴らだろう。 この辺での大きな獲物となる長州藩は…。 「(枡屋にいる古高…)」 とうとう捕まったか。 古高が捕まったことで、今日の夜は緊急会合が行われるだろう。 そこを狙うのかな。 「(会合行うとしたら、池田屋か四国屋ってところか)」 これは怪我人とか、最悪死人が沢山出るだろう。 今日の夜は血なまぐさくなりそうだ。 「なまえちゃん!」 「千鶴、どうした?」 「広間で山南さんが呼んで」 「ん、わかった、今行く」 どうやらみんな出陣した後らしく、やけに静かだった。 まるで、嵐の前の静けさみたいな。 新選組は、四国屋に主戦力を向かわせたらしい。 だが、池田屋も捨てきれないと少人数で向かったらしいのだが。 「(実際どっちだろうな…)」 「山南総長、やつらの会合場所が池田屋と判明しました」 「!!」 音も気配もなく出てきたのは、監察の山崎だ。 正直吃驚したけど、監察なら当たり前のこと。 それよりも、 「あぁ、それは困りましたね」 「主戦力は四国屋なんですよね…?」 「えぇ…。新選組は意外と賭け事に弱いのかもしれない」 池田屋は局長も行っている。 きっとその数人で討ち入りするのだろう。 「山崎君、ひとつ面倒を頼まれてくれますか?」 「(さぁ…どうでるんだ?)」 「まず敵の所在は池田屋であると、四国屋に向かった土方君に伝えてください」 そりゃそうだ。 伝えなくてはどうにもならない。 「そして大変お手数ですが、その伝令にはこの子も同行させて欲しい」 「ーえ?!」 千鶴を…? また大胆なことを考えついたな。 山崎は反論しているけど、一人より二人の方が確実と言えば確実だ。 「そしてみょうじ君、君は池田屋に向かってみんなの助けとなってください」 「は、」 「あなたは幹部にも遅れをとらないと聞きました。やってくれますね?」 「あぁ」 久しぶりの戦いだ。 血も沢山飲み放題じゃないか。 これは行くしかない。 「(すごくワクワクしてきた)」 私は池田屋に、千鶴たちは四国屋に。 時間はそうない。 さて、行きますか。 |