長編不器用な青春 | ナノ




17




「えぇ?!斎藤先輩と付き合うことになったぁ?!」
「う、うん…さっきね…てかなまえ声大きい…」

あれから約一週間が経つ。
それまでいじめていた奴らから謝罪があったり、千鶴が帰ってきたり、薫がまた海外に戻っちゃったり、

「なまえちゃん大好き!」
「黒幕名前!」

黒幕名前が私たちと一緒にいるようになったり、周りがどんどん変わっていくなぁって思った矢先の冒頭の言葉。

「千鶴ちゃん、斎藤先輩と付き合うことになったんだぁ」
「そうなの…」
「千鶴顔真っ赤だよ?」
「いやっだって…恥ずかしい…」

小動物みたいだ。

いや、待て、問題があるな、これ。

「確か、藤堂くんって千鶴ちゃんのこと…」
「なんで黒幕名前が知ってんの…?」
「周知だと思うわ」
「あぁ…」

斎藤先輩に呼ばれ、去っていった千鶴の背中を見ながら黒幕名前と話しをする。

あぁ、本当に一週間前が嘘みたい。

「でもまさか千鶴が斎藤先輩のこと好きだなんて」

思えば私ら、互いの好きな人知らなかったかも。
平助はわかりやすかったけど。

「なまえちゃんは言わないの?」
「へ?」
「藤堂くんに好きって」

今がチャンスだよ、って言われても…。
まぁ…慰めぐらいはしてあげようか。

「気が向いたら言うよ」
「その内盗られちゃうかもよ」
「モテるからなぁ」
「そうしたら私がなまえちゃんもらってあげる」
「ガチでしょ」
「もちろん」

目が嘘じゃないって言ってるよ。

「あ、平助」

黒幕名前とじゃれあっていたら、向こうから平助が歩いているのが目に入る。

「どんまい」
「は?何が?」
「千鶴のこと」
「あぁ…別に千鶴はってなんで知ってんだよ!」
「黒幕名前も知ってるよ」
「藤堂くんわかりやすいんだもーん」
「あぁそう…」

あらら、肩が垂れ下がった。

「でも俺が千鶴のこと好きだったのは前だったし、今は…あ」
「前?ってことは藤堂くん今は違う子好きなの?」
「…そうだよっ」

恋多き男め。
ズキンズキン痛い心には目を背け。

「へぇ…誰?」
「な…っ言わねーよ!」
「なんだ残念」

本当に残念。
誰かわかったら協力もできるし、心に蓋をすることもできるのにな。

「ところでなまえ」
「何?」

真っ赤な顔した平助が問う。

「お前は好きな人いねーの?」










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