過去短編 | ナノ




成れの果て




血が欲しい。


「なまえ…?」


髪ガ白くナって。


「そ、んな…」


いヤダ。


「彼女はもう…」


あなたノ側に居タイ、アなたヲ守リたイ、アナタガ好キ…。

狂イタクナイヨ。


『へ…すけ…』

「なまえっ」


差し出した手を、私は引っ込めて、なんとか理性を留めて。

あなたに触れたらあなたを傷つけてしまう。


『そ、んな…の…っ』


許される筈がない。

私を受け入れてくれた平助を好きになって、あなたを守ると誓って、死にそうになった身体を羅刹に変えて、今日まであなたを守りたかったのに。

狂ってしまった私は、もうどうすることもできない。苦しい悲しい辛い。


『殺し、て』

「馬鹿…っ何言って…」

「この子は失敗だよ。殺さなきゃ」


「総司!!」と怒っている平助は、まだ私のことを人間だと思ってくれているのだろうか。
どこまでもお人好しなんだからなぁって思った。
本当にお人好しの馬鹿で、私の唯一の光…。

失うわけにはいかないよ。


『殺、して…くだ、さ…っ』


心臓を一突き。
それが羅刹の殺し方。
目の前に飛び散る赤い液体が、自分のものだと気づくのにそう時間はかからなかった。

殺ってくれたのは沖田さんだろうか。

掠れる視界の中で捉えたのは、真っ赤に染まった刀を持って、顔を涙で濡らした平助の姿。

倒れる私を素早く抱きかかえた彼は「ごめんな…っ」ってずっと言っている。

今なら、この手もあなたを傷つけることはないだろう。
手を伸ばし、平助の涙を少しだけ拭って、最期の言葉を、


『ありがと…ごめん、ね…そし、て…』


大好きだよ。


「なまえ…?…一緒にまたお茶しよう…って、言っ、たよ…な?なぁ、約束、破るなん…てらしくねぇよ?…雪合戦とかしたいって、言って…た、じゃん…か…なぁ…っ」

「灰になん、か…なってんじゃ…ねぇ、よ…まだ、言ってないんだよ…っ…好きだっ、て…なまえ…っ…」


私はもう、その言葉だけで十分だよ。
だから、私の分まで幸せに生きてください。

でも…欲を言えばもう少し一緒に居たかったかな。


もう泣かないでよ
(私ね)(これでも幸せだったんだよ)(あなたの側に)(いれたから)

「守ってやれなくて…ごめん、な…っ」



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