過去短編 | ナノ




素顔




じつは。


「なまえって彼氏の前でもメイクしてるの?」

『うん、してるよ』

「すっぴん見せたことある?」

『…ない』


私は彼氏にすっぴんを見せたことがない。だって、会ったときからメイクしてたし。今更素顔を見せるのが正直怖い。


「見せたことないんだ…やばいね」

『やっぱりやばいと思う…?』

「ふられる確率大だね」

『どどどどうしよう』

「今日見せろ」

『馬鹿言うな!』


冗談じゃない!それって、今日フられるかもしれないってことじゃないか!悶々と頭の中を巡ってたら「あ、沖田くーん」っておおい!


『何呼んじゃってるの?!』

「腹くくりなさい」

『嫌だ!』


ほらっ!総司来た!すっごいニコニコしながら来た!ちょ、その笑顔なんか怖い。


「何?どうしたの?」

「なまえが今日すっぴん見せてあげるってさ」

『言ってない』

「待ってたよ。やっとこの日が来たんだね」

『待ってください』

「家に連れてくって張り切ってた」

『誰も張り切ってません』

「どうしよう。僕緊張してきた」

『総司って緊張するんだ』

「頑張れなまえ」

『散々無視しといて言うのそれ?!』


この二人はどこか似てるな。いや、私をいじめるところは一緒だ。酷いぞ。それより。それより、なんか知らないけどすっぴん見せる流れになってる。


『いや私は見せないから「見せてくれないの?」う…っ!』


目をウルウルさせて…まるで子犬だ。それか、子猫。どうしよう断れない。


「酷いよね。僕は色んな素顔を見せてるのに」

「色んな素顔って何?」

「そりゃ『はいストーップ!』ちぇ」


ほら!友達は「何何何?」ってニヤニヤしながら聞いてくるし。興味持たないでー!やめてー!


『な、なんでもないから!』

「気になる」

「なまえが素顔見せてくれないから特別教えてあげるよ」

『わかった!見せる!見せるからやめてぇええええええ』


と、言うことで見せることに。覚悟…しておこう…。
















「ここがなまえの家なんだ」


こんな日こそ放課後になるのは早くて、あっという間に家に着いちゃって。人生初、彼氏を家にあげちゃいます。最後になるかもしんないから、よく噛みしめておこう。


『はい、ここが私の部屋』

「意外と綺麗だね」

『汚いって思ってたの?』

「うん」


こんちくしょう!どうせだらしない女ですよ!台所からお茶やお菓子を持ってきて、少しでも時間を…って思ってたら、「で、いつ見せてくれるの」あははー…死亡フラグ…。


「今見せてよ」

『今すか』

「うん、今」


しぶしぶ承諾して、しぶしぶ洗面台へ行き、しぶしぶメイクを落とす。これでフられたらあいつに八つ当たりしようと腹で決める。


『お待たせ…しました…』

「……」


総司は目を見開いていて、うわこの顔貴重かも。いやいやいや、これはオワター\^p^/って感じってか、うんわかってた。


「なまえ…だよね?」

『そーですよ』

「やっぱり外ではメイクしててよ」


あーあーそういう!すっぴんの私とは外も歩きたくないってことですか、そうですか。なら別れればいいのに。


「そんな可愛い素顔、他の男に見られたくないからね」

『はいはい…って、え?』


思考がフリーズ。なんつった?この男。


「あ、その顔も可愛い」

『えと、その、うん?総司さん?』

「なーに?」

『近いです…いや、はい、まじ…』

「緊張してるの?」

『…っ!!』


してますしてます。バクバクです。破裂しそうです。だってアップアップ!超どあっぷ!


「可愛いね。食べちゃいたくなるな」

『た、食べ?!』

「うん、好きだよ」




もっと素顔を見せてよ
『答えになってない!』
「なまえは?」
『え…す、好きです…?』
「…っ可愛すぎ」












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